しおりさんが遠くの町へ引っ越してしまったことで、わたしたちのプライヴェートな<レジェンダリー・マンスリー・トーク>(ただのお喋り)はできなくなってしまった。しおりさんの引っ越しの直後にコロナ禍がやってきた。
コロナ禍、すなわち新型ウィルスのパンデミックはわたしたち(全世界のピープル)には偶然のタイミングだったけれど、しおりさんが何かを予感していなかったとはわたしたち(わたしとハジメちゃん)には言い切れないと思っていた、ハジメちゃんもわたしもそんなことをカクニンするのは野暮ったいので話題にしたことはなかったけれど。
代わりに、というのではなくただわたしたち三人が始めたことは、わたしたちがふだん聴いているポッドキャストの番組みたいにちょっとした「お題」を用意して、Zoomのオンライン・ミーティングでわたしとハジメちゃん、しおりさんを繋いでわたしたちの<レジェンダリー・マンスリー・トーク>を復活させたことだった。
ポッドキャストと違うのは、それを全世界に向けて発信したりしないことで、ポッドキャストと似ているのは、わたしだけはそれを録音して、寝る前や通勤時に時々、聞き返していることだった。
わたしは本格的に鳥見(バードウォッチングのことを、愛好家はそう呼ぶらしい)を始めたカズヒコと一緒に野鳥の会に入り、野鳥の会の会員制度には<家族会員>というのがあって会員の家族は格安で入会できるのだが、わたしとカズヒコ(そしてチャーちゃん)には法的な親子関係がなくてわたしたちはそれぞれ入会することになった。もちろん年会費は保護者であるわたしが払っている。しかしそれはわたしの思い違いかも知れず、<家族>の定義をわたし自身が予断していたのかもしれなかった。いずれにしても会の理念に賛同するにやぶさかではないので、それを損得勘定でどうにかしようとは思わなかった。
「日々のレッスン」というタイトルは、ずっと前に読んだ本書のタイトルを何となく、そういうふうに間違って記憶していたことに由来します。
シリーズ「日々のレッスン」について
「日々のレッスン」は、フィクションと日記のあわいにあるテキストとして、不定期連載していくシリーズです(できれば日記のように、デイリーに近いかたちで続けていけたら、と考えています)。また、それにApple Musicから選曲した<野鳥音楽>プレイリストを添えた「日々のレッスン ft. Bird Songs in Apple Music」を、月1、2回のペースで更新していく予定です。ご期待ください。
【以前の記事から】
日々のレッスン #001「小さな二階だてのビルディング」(ft. Bird Songs in Apple Music) - ソトブログ
【日々のレッスン・バックナンバー】