あえて鳥たちの姿を探すまでもなく、音楽には彼らが偏在している。
音楽を聴いている時間そのものをマインドフルに鳥たちに仮託し、鳥たちが自由に空を駆けるような心地で(Free As a Bird)、音楽に浸っていたい――そんな気分でプレイリストを選曲している音楽企画「Birder's Songs」の第29回をお届けします。選曲はいつものように、Amazon Music Primeで。
『宇宙を撮りたい、風船で。/世界一小さい僕の宇宙開発』(キノブックス、2015年)に個人で開発した装置で風船宇宙撮影に成功した記録を著した岩谷圭介さん(現在は株式会社岩谷技研を設立、<気球による “NearSpaceからの宇宙旅行” を目指す、旅客技術開発会社>にて研究・開発に取り組まれている)。
遡ること1992年。自ら風船ゴンドラ「ファンタジー号」に乗って、太平洋を横断、アメリカ大陸を目指し空へと消えたピアノ調律師、風船おじさんこと鈴木嘉和さん。
空を駆ける欲望は人間の性(さが)なのか、音楽でも古今、洋の東西を問わず幾多のアーティストが、鳥たちや羽根を創造/想像の源泉として、音楽を作り続けてきました。わたしのこのシリーズの選曲方針は、基本形としては、<鳥にまつわるタイトルや歌詞のある、あるいは野鳥のさえずりをサンプリングした楽曲などを織り交ぜたプレイリスト>(拙著『踊る回る鳥みたいに』「はじめに」より)というのものですが、あえて音楽に鳥たちの姿を探すまでもなく、メロディにビートに、ライムにフロウに、わたしたちは、彼らの姿を見つけることができる。とわたしは思っています。
おとうさんコレ聴いてみたらといって、息子が一枚のCDを置いていった。角がすこし擦り切れていて、ジャケットの写真もずっと以前に観たかもしれないフランス映画みたいに偏屈で、うらぶれてもの悲しい。TOM WAITS “Mule Variations” 知る人ぞ知るダミ声ロッカーなんだそうだ。ジャンク・ミュージックなんて分野があるかどうかは知らないけれど、そんな気分の音が聴きたいなんて喋ったことがあったのかもしれない。ゴミバケツのフタや無用の水道管など蹴散らかして、踏みつぶされちまった産廃のように美しい音楽だ。
平野甲賀『もじを描く』(編集グループ〈SURE〉、2006年)より。※本書の購入は右記編集グループ〈SURE〉公式サイトより可(Amazonや一般書店での取り扱いはなし):平野甲賀 もじを描く|編集グループ〈SURE〉
地べたに落ちたゴミバケツのフタの穴から空を夢見る、わたしたち。
プレイリスト「2022.06_Has Anyone Seen My Wings」
※以下、選曲は全て、「演者/曲名」で表記しています。
※プレイリストのリンクをクリックすると、Amazonプライム会員の方は、Amazon Musicで聴くことができます。
「2022.06_Has Anyone Seen My Wings」(選曲:ソト)
M01. Mates of State/Technicolor Girls
M02. Jaymay/Rock Scissors Paper (RSP)
M03. 樽木栄一郎/プラレールの恋人
M04. Vanessa Carlton/A Thousand Miles
M05. Waxahatchee/Catfish
M06. The Blow/Hey Boy
M07. Hop Along/How Simple
M08. Mirah/Million Miles
M09. Kacey Musgraves/Butterflies
M10. Erin McKeown/The Foxes
M11. jeremy messersmith/Skyway
M12. The New Amsterdams/Has Anyone Seen My Wings (Cured)
Vanessa Carlton - A Thousand Miles (Official Music Video) - YouTube:プレイリストM03、ヴァネッサ・カールトン2002年のヒット曲「A Thousand Miles」も実は“空を駆ける欲望”の曲であって、MVにはピアノを弾く彼女の傍らに、フクロウの姿が。
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本連載「Birders' Songs(野鳥と音楽を愛する人のためのプレイリスト)」は、今後も毎週月曜更新予定です。次回もお楽しみに!
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