バーダーならクラウド上の音楽ライブラリにも、鳥たちを見逃さない目を持ちたい。
保坂の小説は、音楽を聴くように、読める。「あとがき」で保坂が「私はこれらの小説を歌のように書いたんだと思う」と記しているが、そのきっかけが花ちゃんと出会ったことだった、というのだから猫はいつも、いるだけで音を奏でたり歌っている、ということを『ハレルヤ』は伝えている。だからハレルヤなのだ、と私は書いておく。猫がこの世やあの世にいることはハレルヤだ。レナード・コーエンの歌う「ハレルヤ」を聴いてみるのもいいし、レナード・コーエンの死ぬ前の三つのアルバム『オールド・アイディア』と『ポピュラー・プロブレムズ』と『ユー・ウォント・イット・ダーカー』がとても保坂の『ハレルヤ』に通じている、と思ったのだった。レナード・コーエンは猫好きだった、イギー・ポップも猫好きだ。それはともかく、猫がいて人類はずいぶん救われたのだと最近よく思う。
保坂和志『ハレルヤ』新潮文庫版巻末に収録、湯浅学(音楽評論家)による「解説」より。
今記事は、
「ジョギング/ランニング用BGMとして、あるいは“室内探鳥/ヴァーチャル鳥見”音楽として聴けるプレイリスト」
を標榜して、わたし(ソト)が選曲したAmazon Music Primeのプレイリストを、ジョガー/ランナー/バーダーの皆さんとシェアしよう、というちょっと奇特ですが、気楽に続けているシリーズ企画、その名も「Music for Slow Joggers/Birders' Songs」の通算第26回目です。
さて今回は、大好きな小説家、保坂和志さんの文庫最新刊『ハレルヤ』の解説文の引用から始めてみました。本ブログでわたしは2022/5/11、「ブックレビュー“読む探鳥”:保坂和志『ハレルヤ』――「低く飛ぶツバメの鳴き交す声が忘れられない」という記事を書いたように、<猫小説>の第一人者、保坂和志さんの短編集『ハレルヤ』は、わたしにとっては<野鳥小説>でもあって、そして<音楽小説>でもあるというか――著者である保坂さん自身と、解説の湯浅学さんの書かれているとおり、保坂小説自体が「歌っている」というか、音楽そのものであるように思えます。
この本をきっかけとしてレナード・コーエン「ハレルヤ」とそのカヴァー・ヴァージョンで始まって終わる今回のプレイリストは、わたしにとっては<野鳥音楽>そのもので、野鳥音楽であればジョギング/ランニングにも最適なのだと思っています。外を走れば鳥たちがいるし、ジムでトレッドミルで走るなら、耳からは鳥たちの音楽が聴こえるのがいい。強引な我田引水と思われるかもしれません。――でも、バーダーなら、街なかでもちょっとした公園でも、もうちょっと足を運んだ自然のなか、森のなかでも、それぞれの場所にふさわしい鳥たちがいることは知っています。なおかつあなたが(わたしが)ランナー/ジョガーなら、例えばいつものコースを走りながら、目の前にツバメが低く飛び交い、空高くではトビとカラスが喧嘩していて、今や街なかでもイソヒヨドリが、美しいさえずりを聞かせているのに気づくはずです。そこへドバトが群れをなして飛んできて、ちょっと遠くの電線の上で、キジバトが「デデー、ポポー」と、低音バッシュで鳴いている――。
そんなわけで、Amazon MusicのAIからのリコメンドにも頼りながら選曲していると、ヴルフペック(Vulfpeck)の「Birds of a Feather, We Rock Together (feat. Antwaun Stanley)」のような素敵な野鳥ファンク・ミュージックにも出逢うことができる。バーダーならクラウド上(雲の上!)の音楽ライブラリにも、鳥たちを見逃さない目/耳を持ちたいと思う今日この頃です。湯浅さんふうにいうなら、鳥たちがいて、バーダーであるわたしはずいぶん救われたのだと、最近よく思います。
プレイリスト「2022.05_Hallelujah」
※以下、選曲は全て、「演者/曲名」で表記しています。
※プレイリストのリンクをクリックすると、Amazonプライム会員の方は、Amazon Musicで聴くことができます。
「2022.05_Hallelujah」(選曲:ソト)
M01. Joan Chamorro & Andrea Motis/Hallelujah (Leonard Cohen - Cover)
M02. Leonard Cohen/Steer Your Way
M03. Carole King/It's Too Late
M04. Taylor Swift/This Love (Taylor’s Version)
M05. Tori Amos/Baker Baker (2015 Remaster)
M06. Yael Naim/New Soul
M07. Grace VanderWaal/Light the Sky
M08. Samm Henshaw/Take Time (Feat. Tobe Nwigwe)
M09. Amber Mark/Bliss
M10. Vulfpeck/Birds of a Feather, We Rock Together (feat. Antwaun Stanley)
M11. SLY & THE FAMILY STONE/Time For Livin'
M12. サニーデイ・サービス/エントロピー・ラブ
M13. Leonard Cohen/Hallelujah
VULFPECK /// Birds of a Feather, We Rock Together (feat. Antwaun Stanley) - YouTube
【Amazon Music オフィシャルサイト】
Amazon Music Prime
Amazon.co.jp: Amazon Music Unlimited
湯浅学さんによる保坂和志『ハレルヤ』解説にも登場した、レナード・コーエン2016年のアルバム『ユー・ウォント・イット・ダーカー』You Wan't It Darker。今回のプレイリストのM02、「Steer Your Way」を収録。
【以前の記事から】
ブックレビュー“読む探鳥”:保坂和志『ハレルヤ』――「低く飛ぶツバメの鳴き交す声が忘れられない」 - ソトブログ
本連載「Music for Slow Joggers/Birders' Songs(野鳥とランニング、ジョギングのための音楽プレイリスト)」は、今後も毎週月曜更新予定です。次回もお楽しみに!
【当ブログの「Music for Slow Joggers」「Birders' Songs」および、音楽、野鳥観察についての記事一覧はこちら。】