「Music for Birders(探鳥家・野鳥愛好家)」を至上命題として、野鳥にまつわる曲をAmazon Music Primeをフィールド・ワークして探してきては、それらの曲を交えた、聴いて愉しい「インドア探鳥」と呼べるプレイリストを作成していくシリーズ、「Birders' Songs(バーダーのためのプレイリスト)」。
今回は第15回。毎週月曜更新としていますので、都合約4ヶ月め。
「そろそろ鳥縛り(野鳥にまつわる曲を選ぶ)ではなくてもいいんじゃないか? ――だってわたし自身がバーダーなのだから、もうそれでいいんじゃないか。」
なんて不遜な想いに囚われたりもしかかって、とにかく聴きづらで自分の好きな曲を選んだりしていても、ちゃんと――というのも可笑しいですが、野鳥に関係する曲(歌詞やMV、時には野鳥の声のサンプリングなども)が見つかるから不思議なものです。
山のなかで、あの地味で小さなちいさな鳥が、美しく囀るのを聴いたなら。
今回のプレイリストは、わたしの気がづいた範囲で、野鳥にまつわる曲は2曲。
1曲目は、M04、Bon Iver(ボン・イヴェール)の「Towers」。Bon Iverはグラミー賞受賞アーティストであって米インディー・フォーク界の雄、ジャスティン・ヴァーノンのソロプロジェクト。ラスト、“Out the hollws swallows nests(ツバメの巣作りする窪みから)”という歌詞で締めくくられる本曲「Towers」は、不思議な塔をめぐるリリシズム溢れるMVでも、鶏や白いハト、海鳥と思しき鳥影など、多彩な鳥たちが登場します。
もう1曲は、M08、日本のバンド、GUIRO(ギロ)の「アバウ」。こちらも歌詞からで、「まだ温かい/焼け焦げた窓に/鷦鷯(※引用者註:ミソサザイ)/何の用だい/運んでくれるかい」。ミソサザイ、ナンノヨウダイ。「あ・い」と脚韻を踏むこの箇所は、掛け合いのようなコーラスワークで、語り手が「鷦鷯」と呼びかけ、ミソサザイの方が「何の用だい」と受けているようにも思えるのですが、今回のプレイリストのタイトルは、
“ミソサザイ、何の用だい?”
と、ミソサザイに対してこちらから尋ねているふうの一文にしてみました。バーダーとしては、ミソサザイはフィールドで出逢えば嬉しい鳥ですが、もしわたしが今のようにバーダーになる以前だったなら――。山のなかで、あの地味で小さなちいさな鳥*1を見て、彼が美しい声で鳴き続けるのを聴いたなら――、奇妙な、ちょっと怖いくらいの気持になるかもしれません。
――と、今の一文を書き終えたあと、もう一度この曲について検索してみたところ、GUIROの髙倉一修さんの、こんなインタビューが見つかりました。
〈鷦鷯(みそさざい)〉もなんで出てきたのかわからなかったんです。あるとき知り合いが〈ミソサザイっていうのは冥途の水先案内なんだ〉って教えてくれて。びっくりしましたね。
ミソサザイが冥途の水先案内である、というのはわたしには文献などの参照ができなかったのですが、そんな作り手の想いを、自分の耳で受け止めることが出来たような、不思議な感触を覚えつつ、このテキストは終わります。まずは鳥たちの、音楽家たちの、音楽を聴いて下されば、わたしには他に言うことはありません。
プレイリスト「2022.02_ミソサザイ、何の用だい?」
※以下、選曲は全て、「演者/曲名」で表記しています。
※プレイリストのリンクをクリックすると、Amazonプライム会員の方は、Amazon Musicで聴くことができます。
「2022.02_ミソサザイ、何の用だい?」(選曲:ソト)
M01. Books/Fralite
M02. 蔡忠浩/気比の松原、残暑のベロア
M03. Spangle call Lilli line/dreamer (YAKENOHARA DUB)
M04. Bon Iver/Towers
M05. ザ・なつやすみバンド/絵になる最初
M06. Karen Dalton/Something On Your Mind
M07. Ghost Funk Orchestra/Bloodmoon
M08. GUIRO/アバウ
M09. jan and naomi/Microphone Bar '93
M10. Clem Snide/Don't Be Afraid of Your Anger
M11. The Wisely Brothers/River
M12. Dirty Projectors/Unto Caesar
Bon Iver - Towers - Official Video - YouTube
連載「Birders' Songs(バーダーのためのプレイリスト)」は、今後も毎週月曜更新予定です。次回もお楽しみに!
【Amazon Music オフィシャルサイト】
Amazon Music Prime
Amazon.co.jp: Amazon Music Unlimited
「Towers」収録のBon Iver(ボン・イヴェール)のアルバム、『Bon Iver, Bon Iver』(2011)
「アバウ」収録のGuiro(ギロ)のアルバム、『ABBAU』(2019)
【当ブログの「Birders' Songs」および、音楽、野鳥観察についての記事一覧はこちら。】
*1:ミソサザイは全長約11cmと、キクイタダキと並んで日本で見られる野鳥のうちで、最も小さな種