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【レビュー】“朗読を聴く”という選択肢:Amazon Audibleと黒鳥社「音読ブラックスワン」。

 

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audible

 

Amazonのオーディオブック、<Audible>の3ヶ月無料キャンペーンを試す。

先日のAmazonプライムセールは、色々悩みつつもKindle本を2冊購入しただけで終わったのですが、ふと目に付いたのが、< Audible(オーディブル)>。Amazonのオーディオブック、すなわち“聴く読書”――もっと端的にいうと朗読本のサーヴィスです。

 

Amazonオーディオブック : Audible (オーディブル)|最初の1冊は無料|Audible.co.jp公式サイト


それまでも存在自体はなんとなく知っていはいたAudible。しかし「月額1,500円+紙の書籍やKindle本よりも割高なAudible本」――というこのわたしのAudibleのサーヴィスの理解には、若干の誤解があるのですが(後述)――と思っていたので、それほど興味を惹かれていたわけではありませんでした。

 しかし日常的にはラジオ/Radikoやポッドキャスト、YouTubeやインスタライブなどで、語りやトークを聴く習慣はあるし、片道40〜50分のクルマ通勤でもそれらを愉しんでいるので、その時間で本を読める(というか、聴ける)のは悪くないな、とも思っていたのです。

そんなAudibleが2021年6月29日までの期間限定で、Amazonプライム会員向けに3ヶ月無料となるキャンペーンを実施しているというのです。世のさまざまなサブスクリプション・サーヴィスと同様に、Audibleも通常でも(Amazonプライム会員、非会員に関わらず)1ヶ月の「無料お試し期間」があるのですが、それが「今なら3ヶ月」。――まあこういうのも、よくある話ではあるのですが、ものは試し、というわけで使ってみることにしました。

 

Audibleのサーヴィス体系――月1,500円の月額料金で、オーディオブックの販売価格に関わらず1冊を購入できる。

Screenshot 2021-06-27 15.23.25Audible (オーディブル) 会員登録 | Amazon.co.jp

 

実際にサーヴィスに申し込み、使ってみてわたしは、Audibleのサーヴィス体系について勘違いしていたことに気づきました。月額利用料金1,500円に加えて、Audible本(オーディオブック)1冊ごとに購入費用がかかるわけではなくて、ざっと以下のようになっています。

月額利用料金1,500円で、オーディオブックの販売価格に関わらず1冊を購入できる。
月の2冊め以降は、30%オフの価格で購入できる。
上記以外に、「今月のボーナスタイトル」を無料で購入できる(2021年6月のタイトルは、今野敏『マル暴総監』)

 

すなわち、会員になると毎月1つ「コイン」が付与され、1コイン=1タイトル購入できる。月が変わるとまた1コイン与えられ、また1タイトル購入できる。2冊め以降は1冊ずつ購入することになりますが、非会員の30%引き。

 Audibleのタイトルは、通常の紙の単行本より4割増し程度の、高めの価格設定となっていて、そのこと自体は前述したように、オーディオブック化のコストを考えれば妥当な金額だと考えられますが、正直にいって個人的には、躊躇する価格ではあります。

それが会員割引後であれば、こちらも概ね、単行本+2割増程度、例えばユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史/下巻』であれば、単行本:2,090円、Kindle:1,881円、Audible:非会員3,500円→会員:2,450円(2021.6.27現在)という感じ。

やはり割高ではあるものの、CD1枚(というアナロジーも、もはや一般性がなくなっているきらいはあるかもしれない)と同程度ということで、手を出せなくはないかな、というバランスにはなっていると思います。

 

例えば上記のユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史/下巻』であれば、単行本:2,090円、Kindle:1,881円、Audible:非会員3,500円→会員:2,450円(2021.6.27現在) )

 

月額料金の1,500円でまずは1冊。というのは、紙の書籍の単行本の価格として考えれば、ほぼ標準、あるいは若干安いくらいと言っていいでしょう。そして現在の――といっても(2021年)6月29日までと、もうすぐ終了してしまいますが――プライム会員向けの月額料金3ヶ月無料キャンペーン下では、3ヶ月で3冊を、無料で入手することができることになります。

まだまだタイトル数も限られているようですが、そのなかから、自分の興味や関心に見合うタイトルを探すのも、また楽しからずや。わたしはまずは、宇野重規『民主主義とは何か』(講談社現代新書、2020)を最初の1枚のコインで、購入してみました。無料期間で試しながら、自分に合うサーヴィスかどうか、見極めてみたいと思っています。

 

宇野重規『民主主義とは何か』Audible版。こちらは原本は新書(書籍版は1,034円)ですが、Audible通常(非会員)価格は3,000円。それをAudible会員であれば、月額1,500円の1コインで読める、ということになります。

 

Audibleとは対極の朗読コンテンツ、「音読ブラックスワン」の魅力。

Screenshot 2021-06-27 20.33.22 blkswn radio | Podcast on Spotify

 

――と、ここで今回の記事を締めてもいいのですのが、実はAmazon Audibleを試してみようと思ったきっかけはもうひとつあって、それが記事タイトルにも書いている、「音読ブラックスワン」です。こちらはGAFAの一角たるAmazonとは対極にある、日本の小さなコンテンツ・レーベル:「黒鳥社」のポッドキャスト、「blkswn radio」内のコンテンツ。
「音読ブラックスワン」は、黒鳥社所属で、雑誌『WIRED』日本版の前編集長、若林恵さん(@kei_wkbysh)が選りすぐった書籍の一部を文字通り音読=朗読しているもので、様々なジャンルの書籍から、それぞれ十数ページ程度、20〜30分程度が抜粋されています。

若林さんはプロの編集者であってプロのナレーターではないはずですが、録音・編集のクオリティの高さなのか、あるいはマイナー・トーンといっても差し支えない、若干暗ささえ湛えた若林さんの訥々とした語り口のせいなのか――、とても耳心地がよく、書籍の一部を抜粋したものなのに、書かれている(読まれている)ことばが、ストンと腑に落ちる、字義通り臓腑に落ちる感覚があるのです。

 

「音読ブラックスワン」で聴いて面白くて、わたしが書籍を購入した一冊、三品輝起『雑貨の終わり』(新潮社、2020) 

 

そして「音読ブラックスワン」の朗読を聴く体験は、複数人の語らい、トークを聴くラジオやポッドキャストとは、根本的に異なる味わいがあると思うのです。ラジオ・パーソナリティのひとり語りとも違う。――それら(語らいやトーク、あるいはひとり語り)は語り手自身の考えやことばが、リスナーに向かって投げられているのですが、第三者による朗読は、当然ながら話者自身の考えを発したものではありません。しかし「音読ブラックスワン」は、Audibleのナレーターが、ただ「読み」(朗読)のプロフェッショナルとしてテキストを読み上げているのとも違っていて、セレクトされた書籍、選られた朗読箇所には、(若林さん個人の趣味嗜好に拠るものではなくて、「blkswn radio」というメディアにふさわしいコンテンツとしてセレクトされたものだとしても)若林さんや、黒鳥社というコンテンツ・レーベルの、価値判断が含まれているといっていいでしょう。

そこから読者、というかリスナーとして、自分に聴き取れる範囲のことを聴き取る愉しみは、語らいやトークを聴く愉しみとは、ちょっと異質なもののように思われるのですが、1日の仕事を終えて自宅に向けて走る車中や、眠る前のフトンのなかの数十分には、(少なくともわたしには)ふさわしいもののようです。

 

 「聴いて面白かった本は、読みたくなる。」けれど、この便利さは、確かに病みつきになりそう。

2021-06-20_03-30-38オーディオブックは読書(黙読)の代替物ではなくて、別の(プラスアルファの)愉しみ。でも、「読めない」けれど、「聴ける」シチュエーションでは、やはりとてもいいサーヴィスだと思います。

 

そしてAmazon Audibleと「音読ブラックスワン」、この似て非なるふたつの朗読サーヴィスに今のところわたしが共通して得た体験というか、感想のひとつは――、
聴いて面白かった、興味を持った本は、読みたくなる。
というものです。書かれた本を「聴く」体験は面白いけれど、Audibleでまるごと一冊聴いたとして、その本からわたしが受け取れるものをすべて享受した、という感覚にならないような気が、いまの時点ではしています。それはわたしが先ほど、「音読ブラックスワン」に対して感じたと書いた、「書籍の一部を抜粋したものなのに、書かれている(読まれている)ことばが、ストンと腑に落ちる、字義通り臓腑に落ちる感覚がある」というのと矛盾しているようですが、「音読ブラックスワン」で面白いと思った本もわたしは、実際に紙の書籍、単行本を購入したものがあります。

そして若林恵さんのこんな発言――、


W(※若林恵の発言)「ただ、本というものは、基本的にはやっぱり変なもので、買うときには何が書いてあるかをわかっていないのだけれど、みなさんお金を出して買っている。たとえば、家具を買うときに、箱に入っている家具を見せられて、「これは、佐久間裕美子さんという人がつくった、いい家具なんですよ」と言われて、「あ、それはいいね」と買ってしまうよなものじゃない? 機能や性能や材質を確かめることなく家具を買う人はいないし、服だって、試着もせずに佐久間裕美子の新作だといってシルエットだけ見せられて買うなんてなかなかない。本を買うということは、こういう変な話ではあるんだよね。」
佐久間裕美子+若林恵『みんなもっと好きに言ったらいいのに こんにちは未来 メディア編』(黒鳥社、2020)第1章「ZINEをつくる」より

 

本の面白さは、読む前の、タイトルや見た目(装丁や手触り)、期待感にもあるし、ページを繰っている最中(あるいは電子書籍の画面の上の字を追っている瞬間)にもあるし、オーディオブックの第三者の読みを聴いている時間にもある。――とにかく本って面白いなあ、というのが、オーディオブック初心者のわたしが、まずは現時点で抱いている感想です。

そういう意味では、オーディオブックは読書(黙読)の代替物ではなくて、別の(プラスアルファの)愉しみかも知れない、と今は思っています。――ともかくも、運転中は黙読はできないので、その点はとても便利なサーヴィスであって、クルマ社会の米国で、それが普及しているのもむべなるかな、と感じている今日このごろです。

 

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