コロナ禍のはじまり、緊急事態宣言下で学校が休校措置のお陰で――というと語弊があるけれども、小学生の長男にとっては結句、鳥見三昧となった春先にくらべ、じりじりと、出口がなかなか見えないまま続くパンデミックのこの秋から冬にかけては、探鳥会にもあまり参加できず、ちょっと停滞ぎみだったバーディング・ライフ。
バードウォッチングを始めて4年、地元中心ながらライフリストも200種くらいになってくるというと、いつものマイフィールド、ご近所探鳥で新しい種、初見の鳥が見られることは少なくなってくるのですが、そういうときこそ思わぬ、予期せぬ出逢いがあるのが探鳥の面白い、奥深いところ。
――というわけで、今冬は、ここ和歌山ではなかなか珍しい、コハクチョウ一羽が滞在中。探鳥を続けていると図らずも、フィールドで先輩バーダーと知り合うことができ、探鳥スポットや種々の情報をご教授下さることもしばしばで、今回も、そんなふうにして教えていただいた観察スポット(現場まで案内していただいた!)で、ハクチョウが水と戯れ、餌場/休憩場所の田圃へと飛び立つところまで、午後のひとときを愉しみました。
ハクチョウというと一般的にはチャイコフスキーのバレエ音楽のように、優雅なイメージがありますが、初めて間近で見るかの姿はとても大きく勇壮で、というより水浴びをする姿はいっそ荒々しいくらい――TV『水曜どうでしょう』のユーコン川での大泉洋さんの、シャワーシーンを髣髴とさせるくらい。
ナビゲートしていただいたヴェテランのFさん(仮名。イニシャルではありません)によれば、午前中は二番穂の田圃にいて昼前にこの川へ、昼過ぎまで水辺にいてまた先の田圃へ、というような一日の行動パターンがあるとのこと。飽くことなくルーティンを繰り返す野鳥たちの振る舞いに学んだり、心癒されたりすることは少なくないけれど、かの一羽のコハクチョウ氏にとってみれば、渡りの途中で仲間の群れとはぐれたのかもしれない。
――となればコハクチョウ氏にとってはイレギュラーな事態ということになるのだけど、それでも悠然と自らのペースでその日その時を過ごすさまは、優雅で美しく、羨ましくも見えるというのは、とはいえやっぱり、こちら側に引き寄せすぎた見方であって――。先日感銘を受けた鳥小説、加藤幸子さんの『心ヲナクセ体ヲ残セ』の境地にはわたしは程遠いな、と思う今日このごろです。
*今回の写真はすべて、長男の撮った写真から(Nikon Coolpix P900で撮影)。
記事タイトルは勿論(?)、こちらから引用しました。
【以前の記事から:人間のドラマに従属しない、鳥を鳥として描く「野鳥小説」の傑作『心ヲナクセ体ヲ残セ』について。】
【当ブログの野鳥観察についての記事一覧はこちら。】