ソトブログ

映画と本、自然観察(あるいは40代、2児の父の日常)

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面白い本について語るのはムズカシイ。あるいは、面白いということは読んでいるわたしを超えているということ。(続々・2020年4月の愉しい日々。with MONO マークシート用鉛筆)

 

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面白い本の面白さはわたしを超えている。ということ。

 

面白い本について、わたしが読んで面白かった本について語るのは難しい。と、思いませんか? 何故ならとりもなおさず、その本が面白かったからで、面白いということは読んでいるわたしを超えているからです。わたしの知っていること、わたしがすでに愉しんでいることをそのままトレースしてくれるテキストを読んでも、人は退屈しかしない。わたしはいま、あえて「わたしは」ではなくて「人は」と書いたのは、「わたしはわたしの事前に期待していたことを書いてくれているモノの方が好きだよ。」という「声」を想定していたからです。期待通りのことを人がしてくれるのは、たしかに心地よいものです。

 

でもおそらくそのとき、わたしはひとりで「退屈」している。

 

そう断言するように書いて、わたしは一度通読していらい、いっぺんに好きになった、一冊まるごと「暇と退屈」について書かれた、哲学者・國分功一郎の論考『暇と退屈の倫理学』から、その証明か回答となりそうなフレーズ、センテンス、パラグラフ、チャプターを探してみました。けれどそんなベンリなテキストはありません。以前この「ソトブログ」でも、(サインペンとノートを紹介する文章のなかで!)紹介したこういうくだりはあります。

 

革命が到来すれば、私たちは自由と暇を得る。そのときに大切なのは、その生活をどうやって飾るかだ、と。

國分功一郎『暇と退屈の倫理学 増補新版』(太田出版、2015年)より

 

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たいへんに素敵な、さわやかな甘ささえ感じさせることばであって、本書の帯文にも引用されているくらいなのですが、この一文で本書の面白さがすべて語り尽くされているとしたら、著者の國分功一郎さんは、400頁あまりを使って暇と退屈についてだけ、論じ続ける意味はありません。

 

もっといえば、意味があるからそうしているワケではない。オーケー、そのとおりです。今回、実はわたしが書きたかった、紹介したかったのはこの本――

 

梨木香歩『丹生都比売』(新潮社、2014年)からの引用。

 

――男って馬鹿なのよ。物事は行きつ戻りつしながら螺旋状に進んでゆくってことがわかってないのよ。
 わたしは主婦の剣幕に恐れをなし、いわれるままに庭にスコップで穴を掘り始めた。

梨木香歩『丹生都比売』(新潮社、2014年)所収、「カコの話」より

 

 マンションから坂を少し下ったところに、小さな本屋がある。(中略)そこだけ見れば普通の本屋なのだが、中に入るとその本揃えの微妙さに感じ入る。実用書とか小説、ビジネスなどのコーナー分けがない。『自然農法の土作り』や『草木の育て方』と同じ棚に、『秘密の花園』、『黒いチューリップ』、『大地』が並んでいるかと思えば、次は『黄河の氷』、果ては『空想から科学へ』、『過去を掘る』、『先史時代の情熱』等が続いている。

梨木香歩同書、「本棚に並ぶ」より

  

 母のいい分はこうだった。
 おそろいを一組しか用意しなかった場合、妹の私が大きくなって、姉のコートを着る頃には、姉には違うコートを買ってやらなければならない。そうすると、「おそろい」は成立しなくなる。小さくなった姉のコートを妹に回す、という経済的にも納得がゆく年中行事と、かつ麗しい「姉妹のおそろい」が、両方成立し続ける、というコースを遵守するには、同じデザインのコートが手に入るときに、全てのサイズを手に入れておくしかなかった、というのである。

梨木香歩同書、「コート」より

  

「ホットチョコレートをお出ししましょう。体が温まります」
 山崎さんが返事をする前に、ご婦人は台所の方へ歩いて行った。途中で、古いステレオの前で立ち止まり、レコードをかけた。曲が流れ出し、山崎さんはこの曲に覚えがあると思った。「スノー・グース(ハクガン)」だった。最初の章は、「グレイト・マーシュ」。霧の向こうで、ハクガンの群れが鳴き交わしている。

梨木香歩同書、「ハクガン異聞」より

 

前回の文章で少しだけ触れた梨木香歩の短編小説集、『丹生都比売』(新潮社、2014年)です。

 

鉛筆で長文を書く。

 

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最後に引用した短編、「ハクガン異聞」を読んだときには、わたしは70年代の音楽に疎く、この曲がプログレッシブ・ロックバンド「キャメル」の曲だとは知りませんでした。というか、いま検索して、初めて知りました。小説を読んだ印象のなかで、ここで鳴っている音楽がそういうものだとは、想像さえしていませんでした。本を読む面白さ、愉しさ、醍醐味のひとつは、こういうことです。

 

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本書の野鳥について書かれた部分について紹介していくつもりが、わずかにスノー・グース=ハクガンについて触れただけになってしまいました。

 

今日のテキストは、鉛筆、トンボ鉛筆の「MONO(モノ)・マークシート用鉛筆」で書きました。またしても、長文筆記用の筆記具ではありませんが、なかなかいい。鉛筆で長文を書くことじたい、学生の頃以来。筆記具によって文章の質が変わるのかについては、またいずれ考えて、書いてみたいと思っています。 

 

2020-04-16_11-41-35 試験などのマークシートにおいて、「濃く、はっきりと」マークできることに主眼を置いた専用鉛筆。ですが、文字を書く用途にも、滑らかさ、濃さといった書き味において、遜色ないばかりか、とてもフィットしていると思います。トンボ鉛筆「モノ マークシート用鉛筆」商品ページ

 

ではまた、Seeya!

 

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  • 発売日: 2015/09/16
  • メディア: オフィス用品
 

 

【以前の記事から:ボールペンは「エナージェルユーロ」、サインペンなら「EMOTT」が、いまのお気に入りです。】 

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