“選べる”というのは大事なこと。
「筆記具で紙に何かを書く」それ自体が好き、という人にならわかってもらえると思うのですが、そのときに使うペンが完全に「この1本」に決まっているわけではない、ということも多いのではないでしょうか。もちろん、決まっている。という人もいるでしょう。そしてもしそうなら、あなたはとても幸せだと云えるでしょう。
ただ、「この用途にはこのペン」。仕事用、とか、メモ用、アイデア出し用、手紙を書くとき、あるいは今わたしが書いているこの文章と同じように、「何となく何かを書きたくて、とりあえずノートを拡げて、――このテキストは無印良品のB5サイズのノートに、文具の充実した地元の洋雑貨店で偶々購入した、<centropen>という製造元ないしブランドの、made in Czech Republicのサインペン、<HANDWRITER>という商品名のプリントされたもの。で書いています――とりとめなく、一文字ひと文字を書きつけていくとき」など、ケースバイケースで使う道具=筆記具を使い分けている人も多いと思うのです。
EMOTTに似た細字、ぺんてるに似た太めのボディ、しかし独特の三角形のフォルム、シンプルなプラスチックなサインペンは、わたしの好みにピッタリ。
どんなにお気に入りがあったとしても、そんなふうに「選べる」ということ自体に愉しみを見出すのはべつに酔狂なことではなくて、それ自体書くこと、書いている内容と同じくらい大事なことであり、こういうふうな「不要不急の」「あえて書かなくてもいいこと」「ただ愉しみのためだけに」書かれるテキストにとっては、書くペンを選ぶことそのものが、書くことと同義、同じことだとさえ思います。
いつもコクヨ測量野帳の持ち運びに使っている「クツワ エプロンバッグ ミニ」。ここにinした数本のペンから、気分で一本を選ぶ。
お気に入りのこれ、について調べない。という選択肢。
今これを書いている、先ほど紹介したこのペン、チェコ製のサインペン、centropen(セントロペン、でしょうか)のHANDWRITERについて、わたしは何も知りません。
書いていて、わかることはあります。
わたしが日頃、このテキストと同じように「ある程度まとまった文章を書く」用途において愛用/常用している三菱鉛筆の<EMOTT>(2019年にリリースされた、とてもスマートで、使い勝手の良いナイスなプロダクトであるEMOTTについては、以前にも当「ソトブログ」で触れています。)に近い、サインペンとしては硬めのペン先の、細字のペンであって、特徴的な三角柱型のボディは、握りやすく、書きやすい。
わたしはこのペンを、とても気に入りました。
気に入ってスルスル書いているうちに、<centropen>というロゴがあっという間に剥がれ落ちてしまいました。
何かを好きになれば、誰かを好きになるのと同じように、それについてもっと知りたくなるのは当然のこと。ではあるのですが、わたしはこのcentropen、あるいはHANDWRITERについて、ほとんど全く調べていません。いちどGoogleの検索窓に、「centropen HANDWRITER」と入力して、検索結果を表示させてはみたものの、リンク先を辿ることはしませんでした。
「わたしのお気に入り」のなかに、わたしのよく知らないものがひとつ、混じっている。
そういうのもまた、悪くないことだと、わたしは思うのです。
今回の文章は、文中に書いた無印のノートに書き出したあと、前回紹介したマルマンのノート、Mnemosyne(ニーモシネ)の横長A5サイズ、5mm方眼罫70シートの「N182A」に移って、さらにキングジム「ポメラDM200」で仕上げました。
【以前の記事から、書きたくなるサインペン&ノート、EMOTT(エモット)とMnemosyne(ニーモシネ)について。】