小学生の長男とバードウォッチングを始めてしばらくしたころ。探鳥会にも参加するようになって先輩バーダーの皆さんの博識に驚かされつつ、自分たちでも野鳥の鳴き声を聴き分けたい、と日本野鳥の会の鳴き声CD、『声でわかる山野の鳥』『声でわかる水辺の鳥 北や南の鳥』の2枚を買い求めてみて、「こんなの覚えられるわけない!」と思ったものです。
それから数年、低学年だった息子も5年生になり、毎年の夏休みの自由研究では野鳥観察の成果をまとめるのを手伝ったり、探鳥会への参加や、コロナ禍でも、観察に適したスポットを野鳥の会の先輩方や地元バーダーの方々にご教示いただいてマイフィールドを拡げつつ――と日々探鳥を続けていると、しだいに野鳥たちの多様な鳴き声、さえずり、地鳴きも少しずつすこしずつ、聴き分けられるようになってきました(もちろん2枚のCDも、リッピングしてスマートフォンにも入れて、繰り返し聴き続けています)。
そして元来インドア派、もともとは外で身体を動かすよりも部屋のなかで本や映画、音楽に浸ることをよしとしてきたわたしは、屋外での野鳥観察と同時に、鳥にまつわる作品を見つけては、愉しんでいるのですが、今回はCD繋がりで、一枚のアルバムを紹介したいと思います。
といってもわたしがこれまで知らなかっただけで、作品はすでに3年前、2018年にリリースされたブラジルのピアニスト、ファビオ・カラムル(Fábio Caramuru )の『EcoMúsica | Aves』。
クラシックやアントニオ・カルロス・ジョビンなどのブラジル音楽の演奏で知られるピアニストということですが、本作は何と、ピアノと日本の野鳥20種とのセッション・アルバム。バードリサーチから提供された日本の野鳥の鳴き声と、はっきりと王道アンビエント・ミュージックの趣の、静謐で流麗なピアノが絶妙に美しい。収録曲名は、「KOMADORI」「ZUAKAAOBATO」「CHUUSHAKUSHIGI」「KAKKOU」などと楽曲ごとに使われた野鳥の種名になっていて、「あ、たしかにこの“ピュー、ピュー”はヒドリガモ!」とか、この鳥ってこんな鳴き声だったっけ、とか、バーダーにとっては音楽そのものと合わせて二重、三重の愉しみの広がる名盤です。
こんなCDを聴きながら、たとえば梨木香歩さんの、野鳥にまつわるエッセイを読み耽る休日の至福といったら!(ただし探鳥日和の晴れた日はもったいないので、雨の日がいいかも)
<作品情報>ファビオ・カラムル『EcoMúsica | Aves』(FLAU)。CDは発売中。また、下記Soundcloudで、CD収録の2曲「UGUISU(ウグイス)」「HASHIBOSOGARASU(ハシボソガラス)」を聴くことができます。
https://soundcloud.com/flaurecords/fabio-caramuru-uguisu
https://soundcloud.com/flaurecords/fabio-caramuru-hashibosogarasu
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