ソトブログ

映画と本、自然観察(あるいは40歳、2児の父の日常)

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「大好きなラジオ番組が終わっちゃう、私は何を聴いたらいいの?」というシリアスな人生相談。

 

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意外とマジメな相談ごと。

 

どういうわけかこんなふうな、吹けば飛ぶようなブログであっても、2週間も更新を怠っていると、書く呼吸がわからなくなるというか、「書くこと」に対するハードルが上がってしまうものですが、2018年ももう12月。終わろうとしています。

 

それが多少なりとも憂鬱に感じられるのは、私にとっては(以前にも書いたことですが)大好きだった――いや、まだ終わったわけでもないですし、今も好きなので過去形でいう必要も、理由もないのですが――ラジオ番組、『菊地成孔の粋な夜電波』(TBSラジオ、毎週土曜日深夜4:00~5:00)が、2018年12月末をもって終了してしまうからです。

 

www.tbsradio.jp

 

そのことを、私は週末になるというと合間を見つけては行きたいと思う行きつけのカフェで、店主のYさん(イニシアルではなく、仮名)に相談しました。人に相談なんてしたことのない私です。いや、ちょっと話が性急過ぎますね。まずはYさんのお店の話をしましょう。

 

そこはYさんがひとりで切り盛りしていて、飲み物もランチも居心地も素晴らしくて――私の、食事や飲料について、カフェという空間のcomfortablenessについての語彙の乏しさから、それを説明することばが見つからないのがもどかしいのですが、ひとりでも親子でも、家族でもしばしば利用しています。Yさん自身、とてもチャーミングで話も面白い方。しかし私の元来の人見知りもあって、また、妻を介してこの店を知ったこと、当初は妻や、子どもたちと一緒に訪れていたこともあって、なんとなく、Yさんとゆっくり会話も愉しむ、ということはなかったのですが、数年前、互いに同時期に、「映画を観る」ということをし始めていた、ということを知って、(Yさんにとってはどうかはわからないけれど)私としては、

「映画の話をするならYさんに」

ということにそれ以来なっていたのです。

 

それで『粋な夜電波』は映画ではなくてラジオ番組、しかもジャズ・ミュージシャンである菊地成孔さんによる、(主に)音楽番組であって、私は『粋な夜電波』を(菊地成孔のファンというわけではない)Yさんが聴いていないことと、しかし私の説明である程度どういう番組なのかを想像してもらえること、Yさんが私が聴いていないJ-WAVEなどのFMリスナーであることを念頭において、

「あの、実は相談があるんですけど――、」

と持ち掛けました。一瞬、ほんのコンマ一秒くらい、シリアスなトーンが感じられるような、しかし誇張した砕けた口調で(それがうまくいっていたかどうかはわかりません)。

 

『菊地成孔の粋な夜電波』に代わって、毎週の楽しみになるような、そして、音楽との出合いになるような、それでいて面白い、心地よいトークが聴けるような、ラジオ番組。という私のオーダーに対するYさんの回答は、

 

 

でした。私は一瞬どきりとしました。実はこの番組、聴いたことはなかったのですが、「これ、いいかも」と見当を付けていたものでした。

 

今話されたことばが作品であるかのように。

 

野村訓市さんというと、映画監督であるウェス・アンダーソンの友人で、映画『グランド・ブダペスト・ホテル』にカメオ出演しているとか、最近作『犬ヶ島』に全面的に協力しているといった話を断片的に耳にしたことがあるくらいで、私にとっては、「実際のところ何をしているのか謎だけれど、何だか色々な人からリスペクトされている」という系譜の有名人。私の大好きなミュージシャン、<けもの>の青羊(あめ)さんもこの番組を聴かれているというのをどこかで読んでいて、気にはなりつつも、『粋な夜電波』のような、毎週、それだけを楽しみにできるような番組、というのは複数要るわけではないので(私にとっては)、これまで聴かずにいたのでした。

 

――この3週間ほど、『粋な夜電波』と並行して、『antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING』(以下、『TRAVELLING WITHOUT MOVING』とします。それにしても、『粋な夜電波』と同じくらい、粋なタイトル。)を聴いてみて、一見訥々と、感情の起伏を見せないような一定の、低いトーンで話される野村訓市さんのトーク、そして『TRAVELLING WITHOUT MOVING』という番組は、時にラフにときにシリアスに、けれどいつもだいたい良い調子、という菊地成孔さんのトーク、そして「労力士(ロレックス)」「WBO」「女子アナコント」「金曜朗読ショー」「ソウルバー<菊>」といったバラエティに富んだ、話題・企画の満載だった『粋な夜電波』とはかなり、趣が異なります。

 

けれど野村訓市さんのトークには、単純に淡々とした、落ち着いた話しぶりとは一線を画す、密度のようなものが感じられます。『TRAVELLING WITHOUT MOVING』のサイトには、野村訓市さんのトークの一部が書き起こされていますが、それを読むと、野村さんのトークが、菊地さんのそれと同じように、ナラティブなものであると同時に、テキストとしての強度を持っていることがわかります。いったいこの人たちは、どうやってこんなふうに、「今話されたことばが作品であるかのように」喋ることができるのでしょう。

 

――その秘密を探るべく、これから毎週、『TRAVELLING WITHOUT MOVING』の放送を楽しみたいと思います。 

 

 

 

 『菊地成孔の粋な夜電波』の番組本。番組名物の菊地さんの「前口上」やコント台本など。2011年4月~9月のシーズン1から、2014年10月~2015年3月のシーズン8まで。私もまだ買えていないので、読んで、いつかまた番組が再開されることを祈りつつ、過ごそうと思います。

 

 【『夜電波』の終了を知った際に、「続けること/終わること」について考えてみました。】

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【「モノとしてのラジオ」も愛おしくていいですね。ソニーのコンパクトなポータブル機「ICF-51」は、3歳の息子のお気に入り。】

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