こういう話はどこから始めていいのか悩むもの。なんて、それが「どういう話」か前置きせずに書き始める私も卑怯者だけれど――、話は可能な限り具体的なところからするべきである。というのが定説です。
というわけで今日(月曜日の夜)は、ひとりの部屋で『しあわせはどこにある』(原題:Hector and the Search for Happiness)という映画を観ていました。『ミッション・インポッシブル』シリーズのベンジー役で知られるイギリスのコメディアン、サイモン・ペグ主演のヒューマン・コメディといえる映画で、精神科医である主人公、ヘクター(サイモン・ペグ)がタイトルの通り、「幸せとは何か」を求めて世界中を旅する物語。――こういうふうに書くとちょっとクサいし、先進国の小金持ちが自分探し、幸せ探しの旅というと、「勝手にしろよ」と、サイモン・ペグが大好きな私でさえ思わなくもないけれど、この映画じたいは、(微妙なバランスで好き嫌いは分かれそうだけれど)私にとっては好ましいものでした。
実はこの映画、私は一度観ていて、月曜日となるとこんな映画を観たくなるのは、週末だけを家族のいる自宅で過ごし、平日は隣県での単身赴任生活、という現在の私のライフスタイルのせい(というか私のいい歳してセンチメンタルな性格のせい)。
と、実はここまでは前置き。
この前の土、日(11/3〜4)は久しぶりに予定もなく、というより予定を立てず、家のまわりで子どもたちと過ごしていました。
ここ、和歌山県田辺市には市街地近くにある市役所の前に拡がる田辺湾には、扇ヶ浜という海水浴場と、風防林である松原、公園、遊歩道が整備されていて、公園にはバスケットコート、スケートボード場なども作られていて、週末の昼下がりというと家族連れや中高生たちが、思いおもいに集まって遊んだり、傍らでは釣り人のおじさんが浜や堤防から投げ釣りをしたりという光景がみられます。――早い話が私たち――私と、小学生の長男、3歳の次男の、一家の男衆3人も、その風景の一部となって、ゴムボールとバットで野球をしたり、砂遊びをしたり。
私の子どもたちの、小学3年生と3歳児という、6歳の年齢差というのは同じ遊びをするのはなかなか難しくて、どんな遊びをしてもどちらかが(というより上が下に)合わせたり、下が上の真似をして背伸びをしてできなかったり、同じ野球といっても別々の遊び方を私が交互に相手をするような、ちぐはぐなものになりがち。しかしこの日はいつもはバッターをしたがる長男が、次男の要望に合わせてピッチャーとなって、片手で100均で買ったバットを振る次男の、そのバットの軌道に合わせるように、緩やかな放物線で、何故か「サッカーボールを模したゴム製の野球ボール」という、こちらも100均ならではの意匠を持ったボールを放ってくれたこともあって、後ろを守る、というより球拾いをする私も、安心して見守っていられました。
そして市内に流れる夕方5時のチャイムを聴いて遊び終えて、護岸工事された海岸沿いを3人で歩いていると、長男が足許の砂つぶ(のようなもの)を拾って、
「これ、貝やねんで」
と教えてくれました。
潮位が上がるとわずかに波がかかる程度の波打ち際の舗装された遊歩道の窪みに、直径数ミリ〜十数ミリほどの無数の砂つぶ、石つぶに見えるものは、実は「タマキビガイ」という貝類(巻き貝)であるというのです。私と長男が通っている地元の、自治体や環境などが主催する自然観察会で教えてもらったのだそうで、同じように会に参加している私には抜け落ちてしまったり、その都度スルーしてしまっている知識も、こんなふうに息子の血肉になっていると思うと頼もしく感じられました(ちょっと偉そうなのが玉に瑕ですが)。
図らずも「ミニ自然観察会」の様相となった、夕刻の扇ヶ浜の海岸の遊歩道。サイモン・ペグ演じる精神科医、ヘクターが旅先で付けていた「幸せについてのメモ」の1ページに、是非書き加えてくれるようにリクエストしたいものです。
こちらも私の大好きな映画。原題の"Silver Linings Playbook"のSilver Liningsは、英語の諺"Every cloud has a silver lining."から。
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