ソトブログ

映画と本、自然観察(あるいは40歳、2児の父の日常)

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音楽によるカンバセイション・ピース――お二人の方から頂いた、素敵なAmazon Musicプレイリストを紹介します。

 

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(……)私と浩介が顔を見合わせていると、あのときは旅行に行っていたゆかりが、綾子に顔を向けて、
「生きていることは奇跡だってこと?」
 と、飛躍したことを言った。
 綾子はしかしすでに自分に投げられた質問とは思っていないらしくて、何も返事をしないで爪先に目を落としていて、私がかわりに、「それじゃあ、歌の歌詞みたいじゃんか」と言った。
「生きていることは奇跡だ」はすぐに意味が通じて、だから歌詞にも使えるけれど、綾子がいま言ったことは簡単には伝わらないから歌詞にはできない。しかしすべての考えや気持ちが歌詞になるとは限らないわけで、そういうものはすぐに自分の言葉に変換しないで、そのまま憶えておく方がいいんだと私は言った。

 

保坂和志『カンバセイション・ピース』(新潮社)より  

 

音楽に何を求めるか、は歳とともに変化すべきもので、ここ最近は「本当に音楽は万能だなあ」と思っています。本当に一瞬で気持ちを持っていく。場所、とか、匂い、なんかも同じような効能がありますが、年を取ればとるほど日々の流れ時の経過を早く感じるように、懐かしいあの曲、だけでなく初めて聴いたこの曲でさえも、あの時あの場所の記憶や今ここの感情を、「代弁」とかではくてそのまま表現していることだなあ、と、
「お前いくつの年寄りだよ」
と言われるがごとくに日々感じている今日この頃です。

 

そんなわけで5月ももう半ばになろうとしていますが、今月も、この「ソトブログ」の月に一度のお愉しみ(になっているかどうか知らない)のAmazonプライムミュージックのプレイリスト紹介をしたいと思います。正直にいってそれほどのアクセスもないブログでこういう「お馴染みの」というような言葉遣いはどうかとも思っているのですが、私自身は、好きなブログ(や連載エッセイ、ラジオ番組)などの、「恒例の!」というような企画、語り口はけっこう好きだったりするので、誰かにとってはそういうものになっていればいいな、と思いつつ続けてみます。

 

 

「お馴染みの企画」として、5月のプレイリストをお届けします。

 

私はAmazon Music、それも(Music Unlimtedは未契約なので)プライムの音源だけで毎月プレイリストを作って聴いているのですが、本当のことをいうと、別に他のサーヴィスと比較して、選んでAmazon Musicなわけではなくて、何でもいいのです。SpotifyやApple Musicの評判も聞きますし色々試してはみたいですが、Amazonプライムミュージックの、プライム会員の契約のみで聴けるというのはやはり魅力で、他のサブスクリプション型サーヴィスを契約すれば払うことになる月額料金で、CDなり本なりというフィジカルのプロダクトを買うことができます(という私は古い人間です)。

 

――というか、私にとって音楽との付き合い方は、今はこれくらいがちょうどいいのです。十数曲のプレイリストと、直近に買った数枚のCD(リッピングしてクラウドに入れたりはしています)。ひと月にじっくり/ゆっくり愉しむ音楽って、それくらいがいいのかな、と。聴き放題数千万曲のライブラリ、もいいですが、100万曲単位のAmazon Prime Musicであっても、聴き尽くしているわけではありません。なのでしばらくは、毎月図書館に本を借りに行くようなつもりで、Amazon Prime Musicのプレイリストを愉しみたいと思います。

 

さて、今月は、お二人の方からプレイリストを贈っていただきましたので、そちらを、私からのアンサー・ソングならぬアンサー・プレイリストとともに紹介したいと思います。

 

ひとり―ALTOGETHER ALONE(選曲:コトリス)

 

※以下、選曲は全て、「演者/曲名」で表記しています。

 

“ひとり―ALTOGETHER ALONE”(選曲:コトリス)


M01. 前園直樹グループ/たぶん戻って参ります
M02. 長谷川きよし/透明なひとときを
M03. ブレッド&バター/今はひとり
M04. 高野寛/いつのまにか晴れ(2014)
M05. 伊藤銀次/こぬか雨
M06. オトナモード/てぃーんず ぶるーす
M07. 金延幸子/春一番の風は激しく
M08. ハンバートハンバート/妙なる調べ
M09. 村上ゆき/さようなら
M10. 伊藤君子/リンゴ追分
M11. 寺尾紗穂/青春時代
M12. ビューティフルハミングバード/夜明けの歌
M13. アン・サリー with Saigenji/白いブランコ

 

www.youtube.com

M04、高野寛「いつのまにか晴れ(2014)」収録のAL「RIO」Officila Trailer


まずは先日、「その人にしか書けない別のこと――<読みたくなるブログ>について。」という記事で、ブログ『喫茶のすたるじあ』を紹介させていただいた、コトリスさん。

 

www.kissa-nostalgia.net

コトリスさんも、Amazonプライムミュージックにハマっているそうです。

 

ブログではライフワークにされている喫茶店巡りの記事を中心に、雰囲気のある素敵な写真と文章を綴られているコトリスさんのプレイリストは、「ひとり―ALTOGETHER ALONE」というテーマ。すなわち、“「ひとり」を感じられる曲”を集めたとのこと。選曲のコンセプトは、コトリスさんいわく、

 

・なるべくソロでやっている
・歌詞に耳を澄ませたくなる(だから邦楽のみ)
・オムニバスCD「喫茶ロック」シリーズに入っている or 入っていそうな曲という縛りを設けました。

 

だそうで、しかも「7曲目からカセットテープのB面というイメージ」。音楽好きのプレイリストは、細部にこだわるもの。そういうことは、Amazon Musicなどのオフィシャルのプレイリストからは伝わらない(もしかしたら選曲者がウラで、そういうことを考えていたりするのかもしれないし、そう考えると愉しくもありますが)こともあって、これこそが選曲の、そして「誰か」のプレイリストを聴く醍醐味というもの。

 

コトリスさんの選曲は、本当にコトリスさんの紹介される喫茶店の雰囲気のような、「一杯の珈琲のような」ひとときを運んでくれます。新旧取り混ぜつつ、同じようにひとりでじっくり歌を聴かせるアーティストを並べながら、こんなふうに様々な感情を喚起させる、その意味で鮮やかなプレイリスト。どうしても音楽の聴き方までも貧乏性の私は、ジャンルや言葉も様々なヴァラエティを考えた選曲をしてしまいがちですが、本当の音楽好きの方のプレイリストってこうだよな、と思わされました。アン・サリー、高野寛、ハンバートハンバートなど私も好きなものと、ブレッド&バター、村上ゆきなど、じっくり聴いたことがなかったものとが同じプレイリストで、その人の選曲で味わえるのも愉しかったです。

 

コトリスさんのプレイリストのタイトルは、かつて話題になった選盤本(私も当時アルバイトしていた書店で売った記憶があります)『ひとり―ALTOGETHER ALONE』から名付けられたそうです。現在絶版。


Seeking a Friend for the End of the World by Soto(選曲:ソト)

 

“Seeking a Friend for the End of the World by Soto”(選曲:ソト)


M01. Scarlett Johansson and Joaquin Phenix/The Moon Song
M02. Siouxsie & the Banshees/Cities in Dust
M03. Lanugo/Sára
M04. Jónsi/Sinking Friendships
M05. matryoshka/Sacred Play Secret Place
M06. Blur/Maggie May
M07. Sonic Youth/Superstar
M08. Johnny Cash/Redemption Song feat.Joe Strummer
M09. Khalil Fong/Four Tour
M10. Herb Alpert & the Tijuana Brass/This Guy's in Love With You
M11. Chet Baker/My Funny Valentine
M12. Grizzly Bear/Foreground
M13. DAOKO/カルアミルク

 

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M09 の、香港のソウル/R&Bシンガー、カリル・フォン(方大同/Khalil Fong)の「 四人遊/Four Tour」Official MV。feat.はフィオナ・シット(薛凱琪/Fiona Sit)。

 

コトリスさんの<縛り>選曲はとても面白く、私もそれに乗っかってみたかったのですが、私の貧しい音楽的素養からはそうした縛りで豊かなプレイリストが作れそうになかったので、<ひとり>から発想しつつ、あえてそこから少しずらしてみました。

 

タイトルの『Seeking a Friend for the End of the World』というのはサントラから1曲をセレクトした同名映画のタイトルから採ったもので、映画は文字通り、ある米国人の中年の男が、小惑星の衝突予測によって地球の滅亡が決定的になった世界で、かつての友人(というか、昔の恋人)を探して会いに行く、というもの。

 

今回のプレイリストはその言葉に引っ張られて、例えばおそらく地球最期のひとりになった<私>が、自身の想い出やかつて触れ合った人たちのことを考えながら聴くような、あるいはそういうシチュエーションのドラマ/映画のサウンドトラックのようなつもりで、(実はあまり歌詞に囚われず)選んでみました。

 

M10がその映画、『Seeking a Friend for the End of the World』(邦題『エンド・オブ・ザ・ワールド』、2012年)から。ハリウッド随一のコメディアン、スティーヴ・カレルがいつものコメディ演技を抑制して、隣人のキーラ・ナイトレイとともに、終わる地球を旅するロード・ムービー。

 

私もかなりメンドくさい設定をしていますね。最近の私の音楽生活のかなりの部分が、映画/映画のサウンドトラックから成り立っていますので、今回もサントラから曲をピックアップしつつ、全体が架空の映画のサウンドトラックとして響いたらいいな、という感じです。

 

Boys on the run -ぼくたち男の子-(選曲:スギーリトルバード)

  

“Boys on the run -ぼくたち男の子-”(選曲:スギーリトルバード)


M01. フラワーカンパニーズ/真冬の盆踊り
M02. Zazen Boys/ポテトサラダ
M03. Yogee New Waves/Climax Night
M04. シャムキャッツ/Lemon
M05. ミツメ/あこがれ
M06. Nabowa/枇杷に捧ぐ feat.次松大助
M07. LUCKY TAPES/MOON
M08. WONK/FAKE_PRMS 
M09. tofubeats/水星(Original mix)feat.オノマトペ大臣
M10. neco眠る/ひねくれたいの feat.スチャダラパー+ロボ宙

 

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M09、tofubeats「水星 feat.オノマトペ大臣」Official MV

 

www.sotoblog.com

 

次は前月に引き続き、私の盟友であるミュージシャン、スギーリトルバードさん。“人と迂闊に音楽の話が出来ない”くらい、本当の音楽好きである彼のプレイリストはいつも刺激的なのですが、彼もまた、今回は、<男の子縛り>で選曲してくれました。

 

七割くらいバーっと選んだ時に無意識に邦楽ばかりだったので、そのまま「邦楽男性しばり」で選曲。
題して、「Boys on the run -ぼくたち男の子-」
男性というよりも「ザ・男の子!」というイメージがあるグループや楽曲をテーマに選曲しました。
おじさんもいますが『シング・ストリート』みたいな青春のイメージが今もなお残っている感じ、というか(笑)

 

彼とは完全に同世代で、M01、02のフラカン、Zazen Boysと、90年代の残り香のする始まりから、今をときめく(男性)アーティストたちへの流れが本当に素敵で、お洒落。というか今のミュージシャン、本当にみんな上手くてお洒落ですよね。スギー氏いわくは「微妙に少し古くて、本当はもっと最新の人ばかりにしたかったんやけどプライムの限界をむかえまして断念」とのこと。この辺の「もうちょっと!」感はやはりAmazonプライムミュージックの残念なところですが、それでも掘っていくとここまでの面子が揃うのか、という愉しさがありますね。なんて、私は名前だけ知ってたり、聴いたことのない人も混ざっていますが。

 

Girls & Boys by Soto(選曲:ソト)

  

“Girls & Boys by Soto”(選曲:ソト)


M01. Blur/Girls & Boys
M02. 'Til Tuesday/Voices Carry
M03. NHORHM/Walk
M04. Smashing Pumpkins/Galapogos
M05. David Bowie/Space Oddity (Mitty Mix) feat. Kristen Wiig
M06. Lanugo/Nad městem
M07. The Cure/Friday I'm in Love
M08. The Notations/Just You And Me
M09. Bob Marley/There She Goes
M10. Janelle Monáe/Isn't This The World
M11. Jessie J/Silver Lining
M12. Rod Stewart/Downtown Train
M13. Anna Kendrick/Cups

 

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M06、チェコのロックバンドLanugo「Nad městem」のOfficial MV

 

対する私のプレイリストは一転してアルファベットが並んでしまいました。M02のみ、日本人ジャズピアニストの西山瞳さんのプロジェクト、「NHORHM」のアルバムから。

 

こちらもまた、「ザ・男の子!」縛りで選曲する自信のなかった私は、Blurの「Girls & Boys」をアンセムに、アドレッセンスを感じさせる音楽を、男女の別なく選んでみました。――これを見て、ひょっとしたら私よりずっと音楽通の方々にはバレバレなのかも知れませんが、上の「Seeking a Friend for the End of the World」とだいぶ似たテイストになってしまいました。途中からは、Blurや映画『アトミック・ブロンド』のサントラ、ボブ・マーリーの楽曲など、半ばあえて重複させていますが、この二つのプレイリストを入れ替えて、タイトルだけ変えてもなんとなく雰囲気で通ってしまうかも、と思うと、(Amazonプライムではなく)私の音楽的バックグラウンドの浅さにちょっとガックリ。

 

ただし意外と全体のムードは気に入っていて、こちらも架空の青春映画のサントラとしてもいいんじゃないかな、と自分では思っています。クリステン・ウィグがデヴィッド・ボウイと歌うM05「スペース・オディティ」や、M13、映画『ピッチパーフェクト』のアナ・ケンドリックなど、普段ミュージシャンとして活動していないハリウッドスターの佳曲が聴けるサントラの愉しさ!

 

プレイリストという“カンバセイション・ピース”

 

 

いかがでしたでしょうか? これを読んで、聴かれて愉しそうだな。と思った人も是非、ご自身でプレイリストを作ってみて下さい。そしてもしよろしければ、私に送って頂けたら、(何の御礼もできませんしかえって迷惑かも知れませんが)アンサープレイリストを送り返させて頂きます。音楽、プレイリストというカンバセイション・ピース*1をきっかけに、愉しいコミュニケーションができたら嬉しく思います。

 

※ご連絡(プレイリストの送りつけ先)は、ソトブログの問い合わせフォームか、Twitter(@t_soto)まで。

 

コトリスさん、スギーさん、ありがとうございました。気が向いたらこれからもよろしくお願いします。

 

皆さんも良い音楽ライフを。それではまた来月、お会いしましょう。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ(や、他の記事も読んで下さい)。

 

 Amazon Music Unlimitedの4,000万曲はやはり魅力。いつかそのうちに利用してみたいとは思ってはいるのですが......。

 

*1:カンバセイション・ピース:18世紀英国で流行した家族の団らんを描いた肖像画の一形式。客人との会話の発端になったといいます。