ソトブログ

映画と本、自然観察(あるいは30代後半、2児の父の日常)

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「#名刺代わりの映画10選」について色々と考えた結果さらけ出す、“映画に仮託した”私。

 

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先日来Twitterで、「#名刺代わりの映画10選」というハッシュタグがちょっとした盛り上がりを見せ、映画好きもそれほどでもなさそうな人も、思いおもいに、それぞれの10本を挙げられているのを眺めていて――、私も色々と考えていました。そもそも「名刺代わり」って? 10選を挙げている人のなかでも、それを意識していない人もいるでしょうが(そのこと自体が悪い、ということは全くありません)、私、気になります。米澤穂信の古典部シリーズではありませんが。

 

単に「私の大好きな10作」というのとも、「オススメの10本」というのとも違う気がします。あえていえば、映画評論家の町山智浩さんが、オールタイム・ベスト映画をセレクトする際に言われるような、「私はこういう人間です」という表明を、自身の思い入れのある映画を通して行う行為、にいちばん近いような。

 

ちょっと視点を変えてみましょう。「名刺代わりの映画10選」を表明する行為そのものを、エンターテインメントとして捉えると、例えばアメコミ映画好きとか、SF好きとか、やっぱりヌーヴェルヴァーグとか、日本映画黄金時代が、とか特撮映画が、などなど…誰がどう見てもその人の嗜好が判るものも、それはそれでコミュニケーションのとば口としてはいいですが、全くジャンルも作風も年代も国籍も異なるこの映画とこの映画がこの人のなかでは「名刺代わり」として並ぶのか!とか、「そもそもこんな映画知らない!?」みたいなものが混じっていたりとかする方が、私には面白く感じられます。

 

そんなことをウダウダと考えながら人のリストを眺めながら、あえてあまり深く考えずに、選んで呟いてみた私の10選がこちら――。

 

 

映画的教養の浅い私であって、私自身のリストがそれほど興味深いものになっているかはともかく、Twitterの呟きでは1作1作についてコメントされているのは見かけませんが、「なぜその人はそれらを選んだのか」という理由の部分が、こういうセレクトの「いちばんおいしいところ」ですから、私も挑戦してみます。さて、そこから何が浮かび上がるか?


その街のこども 劇場版(2010年、監督:井上剛)

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見知らぬ誰かとだれがが出会う、という最も映画的なシチュエーションで、「結局は何も起こらないこと」、とくに男女の関係として、起こらないということ。そのことによってこんなにも豊穣な「物語」が描けるということ。今、「物語」とあえて書きました。元々はテレビドラマだったものを再編集した83分の作品のなかで、二人の男女が夜通し歩きながら会話をしているだけ、とも言えるストーリーに、ふつうの物語的な起伏は無いようにも見えますが、これもあえて言えば、この83分の中に、彼ら、ではなくて「観ている私」の人生そのものが写し撮られている。2つの意味で、私の理想が描かれた作品です。

 

ビッグ・ボーイズ/しあわせの鳥を探して(2011年、監督:デヴィッド・フランケル)

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「北米大陸で一年間に“見た“鳥の数を競う」という本当にあるコンテストに懸ける人たち=“Birder/探鳥家”を描くコメディ。一般の人には関心のない世界を描きながら、私たちの生活を嫌味なく肯定する、アメリカン・コメディの真骨頂。同じ監督の『プラダを着た悪魔』も『マーリー/世界一おバカな犬が教えてくれたこと』も大好きですが、今や息子共々バードウォッチ初心者になった私はこれが一番好き。

 

レイチェルの結婚(2008年、監督:ジョナサン・デミ) 

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アルコール・薬物中毒のリハビリ施設を退院してキム(アン・ハサウェイ)が向かうのは、実家で行われる姉の結婚式――。家族に対し何重にも複雑な感情を抱えるキムを演じるアン・ハサウェイも素晴らしいけど、ジョナサン・デミ監督の、ヴェテランとは思えないキレキレの演出のなかで、後半の結婚式の夜通し続くパーティの、メイン・キャラクターの抱えるドラマをも脇に措いたまま続く感触と、音楽の素晴らしさ。“そして人生はつづく”という言葉が本当に似合うシークエンスはこの映画の、ここを置いて他に無いんじゃないか。

 

王立宇宙軍 オネアミスの翼(1987年、監督:山賀博之) 

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少年時代から大好きで、オールタイム・ベストのアニメは何?、と訊かれたら絶対に挙げたい作品。とはいえその素晴らしさを言葉にできるようになったのは大人になってからで、言語や服飾、貨幣などディテールに拘った世界観と作画、有名なロケット発射シーンのリアリティと迫力。そして、“怠惰な若者”を絵で描いたような主人公の青年シロツグが、宇宙飛行士としての使命に目覚める動機が「好きになった女の子のため」で、しかもそれが報われるわけではない――そういうことの全てに、恋すら知らない小学生の頃の私が気づいていたとは思わないけど、多分ここから多大な影響を、私の人生は受けています。

 

水の中の八月(1995年、監督:石井聰亙)

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以前、「夏の映画、邦画編」という記事でも触れましたが、高校時代に出合って以来、忘れられない、石井聰亙監督作でも最も好きな一本。結局は人の気持はわからない。だとしたら、「<私>自身がどう思い、どう行動して、相手に働きかけるか」しかないんじゃないか、という映画だと、今は思います(私にとっては)。

 

世界にひとつのプレイブック(2012年、監督:デヴィッド・O・ラッセル) 

 

他のどんな名画をも差し置いて、私の「オールタイム・ベスト」にしたいくらい。あえてここでは設定やストーリーに触れませんが、本作のブラッドリー・クーパー演じる主人公に思い入れ、共感し、自己同一化するということが何を表明するか、という意味で、私にとって10選のなかで最も“名刺代わり”らしい映画。あまり踏み込むと人格を疑われるかもしれませんが、そうなのだから仕方がない。これからもずっと大切に思うであろう作品。

 

エンジェルウォーズ(2011年、監督:ザック・スナイダー)

エンジェル ウォーズ [DVD]

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“人の生において「フィクション=物語」が果たす役割とは何か”を語り、描いているという意味で、ギレルモ・デルトロ監督の『パンズ・ラビリンス』や、アン・リー監督の『ライフ・オブ・パイトラと漂流した227日』ともリンクするような作品であると、確か宇多丸さんもTBSラジオ「ウィークエンド・シャッフル」で言われていましたが、私が何故あえて他の2本ではなくこれを選ぶのかといえば、この映画の「フィクション=物語」の層が最も荒唐無稽で、しかもキャッチーであることと、その下に横たわる現実が、一番シビアであること。映画自体の“深み”は他の2本に劣りますが、具体的な場面が頭に思い浮かぶ点で、「フィクションの効用」を最も体現していると言えるでしょう。

 

サンダーボルト(1974年、監督:マイケル・チミノ)

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クリント・イーストウッドの映画のなかでも最も好きな映画のなかの一つですが、その理由は何といってもイーストウッド(主人公・サンダーボルト)の若い相棒を演じるジェフ・ブリッジスのキュートさ。『ビッグ・リボウスキ』の、あのだらしないデュードや、『トゥルー・グリッド』の老獪なコグバーン保安官などでのイメージしか持っていなかった私は、初めて観たとき驚いたものですが、とにかくイーストウッド、ブリッジス、そしてジョージ・ケネディも加わったサンダーボルト一味のへらへらしたお気楽さは、私にとって永遠の憧れの対象です。

 

暴力脱獄(1967年、監督:スチュアート・ローゼンバーグ) 

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憧れの対象といえばこの映画のポール・ニューマン演じる“クールハンド・”ルーク。決して権力に屈さず、どんな状況に置かれても、そこから一歩引いたように笑顔を浮かべながら、しかし信念のために徹底して闘う。実際、彼が何を「信じて」いるかはわからない。本人にもわかっていないのかもしれない。選択を迫られることがあれば思い出したい映画であり、真の意味で高潔な人物。

 

トリュフォーの思春期(1976年、監督:フランソワ・トリュフォー)

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子どもを描いた映画は数あれど、トリュフォーの映画を観てしまうと、他の映画は「本当に子どもの目線」を描いているように見えなくなる。なぜトリュフォーだけが、「子どもの世界」を描けるのか。そんな大上段なことを考えなくても、この映画の彼ら、子どもたち一人ひとりを見ていると、悲しくて嬉しくて愉しくて微笑ましくて堪らなくなる。そんなことを感じさせる文章を自分も書けたなら、と思うし、自分の人生や子どもたちの人生もそうであって欲しいと思う。そしてこの映画の子どもたちのその後の人生を想う。

 

あなたの「名刺代わりの映画」は?

いかがでしたでしょうか。この10本と、その紹介が私の「名刺代わり」になっているかどうか、私自身には心許ないですが、人の「名刺代わりの映画」にまつわるこういう文章なら、いくらでも読みたいです。ぜひあなたも書いてみて下さい!

 

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