愛すべき“プレイリスト映画”たち。
近年最もヒットした「プレイリスト映画」(そんなジャンルありませんが)は勿論、キーラ・ナイトレイ扮するSSWと、マーク・ラファロ演じる落ち目の音楽プロデューサーが、互いのプレイリストをスプリットしたイヤフォンで一晩中聴き合いをするシーンが素敵だった、ジョン・カーニー監督『はじまりのうた』(原題:Begin Again、2013年)であって、私も大好きな作品です。
そしてこちらは記憶に残らない邦題のせいか、あまり知られていませんが、私がそれと同じくらい好きな「プレイリスト・ロマンティック・コメディ」(くどいようですがそんなジャンルはありません)が、『キミに逢えたら!』(原題:Nick and Norah's Infinite Playlist、2008年)です。
元カノに選曲CD(ミックスCD、プレイリスト)を送り続ける高校生バンドマン、ニック(マイケル・セラ)と、そのCDをゴミ箱から拾っては聴くことで、見ず知らずの彼のことに惹かれていくノラ(カット・デニングス)。ノラがある晩出掛けたライブでニックが出演していたことで出会った二人は、彼らは二人ともが憧れるバンド、“Whre is Fluffy”のシークレットライブがその夜、ニューヨークのどこかで行われることを知って、一晩中探し回ることに――。そんなストーリーラインの映画の音楽がいい加減なはずは勿論なくて、ウェス・アンダーソンの映画でも知られる、DEVOのマーク・マザースボーが担当しています。ニックのプレイリストの楽曲が詳細に紹介されないのが「プレイリスト・ファン」(そんなの…以下略)としては残念ですが、端々で交されるこんな会話――、
「私たち音楽の趣味がまるで同じね。ぴったりよ。
でもザ・キュアーは別。」
「苦手なの?」
「曲はいいけど、“ザ・キュアー”って名前がね。
一体何を治療(キュアー)するわけ? もっと激しくなきゃ。」
(映画『キミに逢えたら!』字幕より採録)
――音楽でも映画でもアニメでもゲームでも、何でもいいですが、何か対象がないと異性と、気になる相手とうまく話もできない、オタク的な性向を持つ人なら思わずグッとくる、こんな場面に満ちた素晴らしい青春映画です。
あるいは『マッドマックス 怒りのデスロード』のフュリオサ役や、現在も上映中の最新作『アトミック・ブロンド』でのMI6のスパイ役などで、すっかり"強い女”が板についたシャーリーズ・セロンのロマンティック(じゃない)・コメディ『ヤング≒アダルト』(原題:Young Adult、2011年)の冒頭で、アラサーのセロンが故郷へ向かうクルマのなかで聴く、ハイスクール時代の彼氏との想い出が詰まったミックステープから流れるティーンエイジ・ファンクラブの"The Concept”。
ストリーミング時代の今だからこそ。
――こんなふうに自分や人が作ったプレイリストが大好きで、自分のためや、恋人や友人のためにミックスCDを作ったりもしてきた、(相手によっては)はた迷惑な私ですが、とはいえ誰しも一度や二度は、お気に入りの曲を集めたミックステープ/MD/CD…メディアは時代の移り変わりとともにさまざまでしょうが、こういうものを作って、人にプレゼントした想い出があるのでは?
プレイリスト自体はCD時代が遠いものになってきた今、曲単位で音楽を聴くのが当たり前でどんな音楽プレイヤーにもアプリにも機能として実装されていて、誰でも普通に使っていると思いますが、先日音楽ネタを呟いてたらこういう話題になりまして。
いいですねー。そういうの大好きですよ。あったら使ってみたいですね。音楽のことは書きたいんですけど、切り口が難しくて二の足を踏んでいますが、考えてみます!
— TSUMORI, Soto(ソト) (@t_soto) 2017年11月22日
そんなわけで音楽系のストリーミングサービスで唯一私が使っている、Amazonミュージックで調べてみたら、やっぱりありました。
Amazon Musicのプレイリスト。こちらはPCのChromeブラウザで開いた画面ですが、もちろんスマホアプリでも簡単に作れます。
Amazon Musicで気軽にプレイリスト交換。
しかもすごく簡単。作ったプレイリストを、共有ボタンから、SNSへ送ったり、URLをコピーして貼り付けたり。Amazon Prime会員同士ならPrimeの音源のプレイリストが共有できますし、Amazon Music Unlimitedの会員同士ならUnlimited収録の音源の入ったプレイリストも共有できます。(私はUnlimited非会員ですが、無料お試し期間を利用して確認しました。)
私のようなプレイリスト好きはネット時代になってからも、個人サイトやSNSを通じて知り合った人ともMD、CDの交換をした経験がありますが、住所を交換する必要がありますし、相手との信頼関係の構築や多少の思い切りが必要になりますが、このAmazon Musicのプレイリストはわりと気軽に交換することができそうです。実際Twitterを通じて、何人かの方がすぐにプレイリストを送ってくれたりして、愉しませていただいたり。
SNSやメール等で気軽にシェアできます。
Amazon Prime Musicの収録曲数は「100万曲以上」と、Amazon Music Unlimitedや、Apple MusicやGoogle Play Musicなどといったサービスの数千万曲単位と比べるとライブラリが少なく、体感としても結構「あ、これもないのか…」ということもあって物足りなさを感じる向きもあるようですが(そしてそのことによって、AmazonとしてもMusic Unlimitedに誘因するのかもしれませんが)、私はそれすらも、逆に「探す愉しみ」があって悪くないな、と思っています。
Amazon Primeの限られた楽曲群からディグるの、意外と面白いな。レコ屋や古本屋で掘る感覚(に少しだけ近い。少しね)。なんでも揃ってるのもいいけど、こういうのも悪くない。
— TSUMORI, Soto(ソト) (@t_soto) 2017年11月23日
そしてプレイリスト好きは続く――。
実はまだCDと、CDからiTunesでHDDにリッピングして聴く、というのがメインの私の音楽ライフですが(スマホでは更に、Google Play Musicにアップロードして聴いています)、それと並行して新たな愉しみを見つけてしまいました。意外にみんな普通にやっていることなのか、意外とあまり使われていないのか、ちょっとわかりませんが、面白いですよ。Amazon Music意外は試していませんが、各社同様のサービスがあるみたいですね。各プラットフォームが提供しているプレイリストをそのまま聴いて愉しむのもいいですが、身近な人やネットを通じて、「その人」が作ったプレイリストを聴く愉しみは、何者にも代えがたいものです。
私自身は、「シャッフルで音楽を聴く」という行為があまり好きではなくて(ラジオなどで不意打ちみたいに知らない曲に出合う、みたいなのは好きですが)、自分や、信頼できる誰かがちゃんと「意図」を持って作ったプレイリストが大好きです。プレイリストについては、映画の他にも「プレイリスト本」の紹介や、私自身の音楽遍歴や身の回りの人のことも交えて、まだまだ書きたいことがあるので、今後もう少しだけ書いてみようと思っています(需要があるかはわかりませんが)。そして皆さんのプレイリストも教えて下さい!(Twitterでもメールフォームでも、送っていただけたら歓んで聴きます。)
“20171123-AW”――2017.11.23選曲、2017年Autumn/Winterに聴きたい、ソトによるAmazon Musicプレイリスト
【関連作品より】
映画『はじまりのうた』、キーラ・ナイトレイが歌う劇中曲も収録のサウンドトラックも素晴らしいです。
上記私のプレイリストより。シンガー、市川愛さんのピースフルなサード・アルバム。こちらはスタンダードカヴァーが主体ですが、来年2018年には、菊地成孔さん主宰のTabooレーベルより、SSWとして日本語詞で歌うアルバムをリリース予定とか。