今週、来る11月9日――。
当ブログでも何度か触れてきたシンガーソングライター、青羊(あめ)さんのソロ・ユニット、“けもの”。今年7月にリリースされた現時点の最新アルバム『めたもるシティ』のリリースパーティが開催されます。本ライブは東京での平日開催で、関西在住の私は参戦できません。が、一ファンとして、けものリスナーが少しでも増えてくれることを願って、再びけもの『めたもるシティ』について書いてみたいと思います。
満ち満ちたハッピーフィール。
プロデューサーにして所属レーベル主宰の菊地成孔さんが自身のラジオ番組『菊地成孔の粋な夜電波』で言われていたとおり、アルバム全体にハッピーフィール、多幸感が満ち満ちています。かといって浮世離れしたユートピア的な世界観ではなく、歌詞には既読されないLINEは/玄関に置き去りのまま」とか、「いいね、がなくても/フォロー外されても」とか、現代的なタームが散りばめられている。にも関わらず、そういうものから自由だと感じられます。
オレンジのライトが繰り返し、鼻をかすめ
助手席の化粧は昨日よりも、薄め
やけに色っぽい隣の唇に
車を止めて、キスしたいよ
けもの「オレンジのライト、夜のドライブ」より
という歌詞で始まる軽快なシティポップ/ドライブミュージック、M1「オレンジのライト、夜のドライブ」を聴いて、私は、小説家・柴崎友香のデビュー作、『きょうのできごと』の冒頭を思い出しました。この小説も同じように、夜の車窓から眺める光と、視線の動きからスタートします(今小説が手許(単身赴任部屋)になくて、うろ覚えです。家に帰ったら確かめて、できれば引用してみます)。
動く!(最高のドライブミュージック)
小説において精神というか思考よりも運動、動くことの方が難しくて、大切なのと同じように(これは書いてみるとよくわかります)、音楽もまた“動く”。私はこのアルバムを、7月の末に買って、8月には家族旅行で片道7時間、関西から広島への旅行中、少なくともその半分の時間、『めたもるシティ』を聴いていました。それから数ヶ月。カーステレオでは9割方、青羊さんの時に透き通るような、時にうつむいてくぐもったような、変幻自在のヴォーカルと、超絶テクニックの演奏家たちのインストゥルメンツを、私も、妻も、一桁の年齢の二人の子供たちも、聴き続けてきました。
先日(11月4日)の『粋な夜電波』に青羊(あめ)さんがゲスト出演されていたのですが、そのなかでも、
「今年クルマのなかで一番聴いたアルバム」
という声が紹介されていたとおり、動いていく風景によく似合います。そして子どもたちの評判がすこぶる、いい。7歳の長男は言います。
私「夏からクルマのなかでいつも“けもの”やったよな?」
長男「でも飽きんのよなぁ。」
2歳半の次男は、「第六感コンピューター」が大好きで、初めは「だいろ、だいろ」と言っていましたが、今はメロディに合わせて、「だいろっかんこむーたー、だいろっかんこむーたー」と歌い、「オレンジのライト、夜のドライブ」が流れると、はにかみながら、「これ、好きなの、この歌。」
ほとんどレビューらしいレビューになりませんでしたが、40に手が届く私以上に息子たちに“けもの”がフィットしたのは、動きと変化に満ちたこのアルバムだからこそ。
11/9(木) 代官山Unit『“めたもるシティ”に連れてって』
『めたもるシティ』には、ゴダールの『気狂いピエロ』から、池野恋『ときめきトゥナイト』、大友克洋『AKIRA』、Fish京子ちゃんや伊勢丹や英エレクトロ・デュオ「HONNE」等々、様々なイメージや音楽、現実世界や空想世界が横滑りしつつ、収められています。というより、それ自体広大な街(シティ)が広がっているような。
その証拠に、11/9(木) 代官山Unit『“めたもるシティ”に連れてって』(けものwith菊地成孔)には、“めたもるシティ”の市長まで登場するらしい。これに参加できる人たちを羨ましいな、と思いつつ、再びライブで見られる日を、楽しみに待ちたいと思います。
歳をとるのは 早いものですね
筋トレしなきゃ 息切れします
2017年のメタモルフォーゼ
理想に一歩だけ 近づいてみませんか?
けもの「めたもるセブン」より
【過去記事より】(『めたもるシティ』リリースに寄せて)