写真:Skley
ここ最近、とくに『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のヒット以降、映画のサウンドトラックがまた面白くなっています。
また、『シング・ストリート 未来へのうた』など音楽そのものがテーマになった映画の場合、劇中の人物(バンド等)の作品がそのままサウンドトラック・アルバムに収録され、しかもそれが最高に素晴らしい楽曲であることもしばしば。
私自身、ここ数年で映画をたくさん観るようになったこともありますが、映画のサントラを聴く機会が増えました。
配信やストリーミングの時代、アルバム一枚を通して聴く、ということが昔よりグッと減りましたが、サントラはその映画のテーマや内容、時代性に沿った統一感がある一方、収録アーティストや楽曲のバラエティに富んでいて、ある種、人のプレイリストを聴くような面白さがあります。しかもそれはただの他人じゃなくて、「あの映画」を作った人たちが、あの映画に合うと考えて作ったプレイリスト!なのです。
通して聴くことでその世界観に浸り、映画への理解もいっそう深まるような気さえしますし、日常のBGMとしても映画のイメージとともに気分のスイッチを切り替えてくれます。それでは――、
はじまりのうた(2013)
はじまりのうた
原題:Begin Again
監督:ジョン・カーニー
まずは音楽そのものをテーマにした映画から。
同じジョン・カーニー監督の『シング・ストリート 未来へのうた』はもちろん最高ですが、『はじまりのうた』で特筆すべきは、劇中でSSWを演じるキーラ・ナイトレイの歌唱。映画のなかではNYの野外でゲリラ・レコーディングを敢行して製作したという設定の、楽曲や演奏の素晴らしさはもちろんのこと、プロパーの歌手ではないキーラ・ナイトレイの、繊細でニュアンスのある歌声が聴ける唯一のアルバムとして。

- アーティスト: サントラ,セシル・オーケストラ,ヘイリー・スタインフェルド
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2015/01/21
- メディア: CD
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ジャージー・ボーイズ(2014)
ジャージー・ボーイズ
原題:Jersey Boys
監督:クリント・イーストウッド
イーストウッド監督による60sアメリカのロック・グループ、フォー・シーズンズの伝記にして、同名ブロードウェイ・ミュージカルの映画化。ブロードウェイのオリジナル・キャストが主要キャストを演じており、サウンドトラックも、フランキー・ヴァリを演じたジョン・ロイド・ヤングの"Sherry"をはじめとした新録が素晴らしい。オリジナルの楽曲の良さを損なわず、今聴いても古さを感じさせないポップ・ミュージックとして成立させています。

- アーティスト: サントラ,ジョン・ロイド・ヤング,カイリー・レイ,フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ,フランキー・ヴァリ,エリック・バーゲン,ボブ・ゴーディオ,ボブ・フェルドマン,ボブ・クリュー,デニー・ランデル,クリュー
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2014/09/10
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インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌(2013)
インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌
原題:Inside Llwyn Davis
監督:ジョエル&イーサン・コーエン
主演、オスカー・アイザックが劇中でルーウィン・デイヴィスとして歌ったフォーク・クラシックや、ジャスティン・ティンバーレイクとキャリー・マリガンが歌う“Five Hundred Miles”など、レイト50s~アーリー60sのフォーク・ミュージックに、新鮮な響きを与えることに成功しています。ルーウィン・デイビスのモデルであるデイヴ・ヴァン・ロックや、ボブ・ディランの楽曲(未発表ヴァージョン)も収録されていて、ここから掘り下げてオリジナルを辿りたくなる名盤。

- アーティスト: サントラ,クリス・タイル,ナンシー・ブレイク,オスカー・アイザック,ボブ・ディラン,デイヴ・ヴァン・ロンク,オスカー・アイザック&マーカス・マムフォード,スターク・サンズ with パンチ・ブラザーズ,キャリー・マリガン&スターク・サンズジャスティン・ティンバーレイク,オスカー・アイザック&アダム・ドライバージャスティン・ティンバーレイク,ザ・ダウン・ヒル・ストラグラーズ with ジョン・コーエン
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ランナウェイズ(2010)
ランナウェイズ
原題:The Runaways
監督:フローリア・シジスモンディ
レイト70sのガールズ・ロックバンド、ザ・ランナウェイズを描いた今作の白眉は、なんといってもあの『アイ・アム・サム』や『宇宙戦争』で子役として活躍していたダコタ・ファニングが、下着姿で歌うランナウェイズのリードVo.、シェリー・カーリーを演じて歌った“Cherry Bomb”をはじめとした楽曲群。私自身、この映画がなければ、ランナウェイズや、他に収録されているストゥージズやセックス・ピストルズの楽曲を、改めて聴くことはなかったかも。

- アーティスト: (オリジナル・サウンドトラック),MC5,ザ・ランナウェイズ,スージー・クアトロ,ダコタ・ファニング,ダコタ・ファニング&クリステン・スチュワート,デヴィッド・ボウイ,ニック・ギルダー
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チョコレートドーナツ(2012)
チョコレートドーナツ
原題:Any Day Now
監督:トラヴィス・ファイン
ここからはドラマ映画。
ゲイカップルがダウン症の少年を養子として育てるために、様々な社会障壁にぶつかっていく、暖かくも、シリアスで胸の痛いヒューマンドラマ。その歌詞がタイトルに引用され、映画内でも大きな意味を持つ、主役のひとり、ショーパブのシンガーを演じたアラン・カミングの歌うボブ・ディランの“I Shall be Released”。この曲のために聴く価値のあるサントラ。
キャロル(2015)
キャロル
原題:Carol
監督:トッド・ヘインズ
今回挙げたサントラのなかで、個人的にはいちばん聴いたかもしれないアルバム。コーエン兄弟とスパイク・ジョーンズの映画全ての音楽を手がけているというCarter Burwellによるスコアと、数曲挟まれる、映画の舞台となっている1950年代のヒットソングのヴォーカル曲とのバランスもよく、ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラの主役二人が湛える気高さにぴったりの、上品で美しい音楽たち。

- アーティスト: サントラ,ジョージア・ギブス,レス・ポール&メアリー・フォード,ジョー・スタッフォード,ヘレン・フォスター&ザ・ローヴァーズ,ザ・クローヴァーズ,ビリー・ホリデイ,Lester Allen,ネッド・ワシントン,ポール・ウェストン,ピー・ウィー・キング
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ファミリー・ツリー(2011)
ファミリー・ツリー
原題:The Decsendants
監督:アレクサンダー・ペイン
『サイドウェイ』『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』のアレクサンダー・ペイン監督作。ジョージ・クルーニーがカメハメハ大王の末裔の一族で、財産管理を行う弁護士を演じた作品。事故で意識不明の重体となった妻の浮気を事故後に知ったり、思春期の子どもたちに翻弄されたり、土地の売却問題で東奔西走したりする、クルーニーのおろおろぶりが哀しくも可笑しい。映画自体、私も大好きな名作なのですが、全編、繊細で美しいウクレレやスティールギターの音が響くハワイアン・ミュージックで占められたサウンドトラックも、映画同様の哀感が漂って、素敵なアルバムです。

- アーティスト: サントラ,ギャビー・パヒヌイ,サニー・チリングワース,レナ・マシャード,ソル・フーピズ・ノヴェルティ・トリオ,デニス・カマカヒ,ケオラ・ビーマー,オジー・コタニ,チャールズ・マイケル・ブロットマン,マカナ,ケオラ・ビーマー with ジョージ・ウィンストン
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幸せへのキセキ(2011)
幸せへのキセキ
原題:We Bought a Zoo
監督:キャメロン・クロウ
原題“We Bought a Zoo”、最愛の妻を亡くしシングル・ファーザーとなったマット・デイモンが、自身と家族の再生を求めて郊外の動物園を買う、というファンタジックな、しかし実話を基にしたストーリー。アイスランドのバンド、シガー・ロスのフロントマン、ヨンシーが全編の音楽を担当しており、「風変わりな設定のヒューマンドラマ」が、ヨンシーの楽曲のMVに見えるほど、この音楽なしに成立しない映画だと感じさせます。10代で雑誌『ローリング・ストーン』の記者になり、自身の体験を基にした『あの頃ペニー・レインと』の監督でもあるキャメロン・クロウならではの審美眼。
フランシス・ハ(2012)
フランシス・ハ
原題:Frances Ha
監督:ノア・バームバック
「映画に使われやすい楽曲」というのがあって、ここでヒロインのフランシス(グレタ・ガーウィグ)の疾走シーンでかかるデヴィッド・ボウイ“Modern Love”もそのひとつ。というより決定版!「こじらせ女子」であるフランシスに、ひょっとして感情移入できない人も、このシーンの素晴らしさにはぐうの音も出ないでしょう。この曲の使用ではレオス・カラックス『汚れた血』が有名ですが、最近ではメラニー・ロラン主演の『突然、みんなが恋しくて』にも効果的に使われていました。

Frances Ha (Music From The Motion Picture) OST
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ヤング≒アダルト(2011)
ヤング≒アダルト
原題:Young Adult
監督:ジェイソン・ライトマン
こじらせ度では『フランシス・ハ』を上回る、本作のシャーリーズ・セロン=メイビス(37歳・独身・YA小説のゴーストライター)。彼女にとっての青春のサウンドトラック(おそらく脚本のディアブロ・コーディ:1978年生まれにとっても)とでもいうべき90sロックが並ぶコンピレーション・アルバムのようなサントラ。映画冒頭でメイビスが繰り返しカーステで聴くティーンエイジ・ファンクラブ“The Concept”をはじめ、私のような完全同世代にとっては、完ペキに青春プレイバックなアルバムであり、映画ですが、上下の世代にはどのように響くのでしょうか。訊いてみたいものです。
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