写真:The Next Web
ブログの副題のところに挙げている、「映画と本、自然観察(あるいは30代後半、2児の父の日常)」というのが、このブログを始めるにあたって、中心的に書こうと思っていたことでした。
理由は簡単で、私が日常生活のなかで、いちばん関心があって、実際にやっていることが映画を観たり、本を読んだり、小学生と幼児の二人の男児と自然観察をしたり、その他の遊びをすることだからです。
なかでも映画は、奈良県で単身赴任、週末和歌山の自宅に帰る、という生活をしている私にとって、ウィークデイの娯楽の中心、というかほぼそれだけみたいなもの。ほぼ毎日、寝る前に――仕事用のシャツにアイロンをかけながら――DVDやネット配信で観ています(ときどき映画館にも行きます)。
というわけで今回、初めて映画のことを書いてみます――映画というとだれでも楽しめる娯楽である一方、ファン層も広く深く、一家言持った方々のたくさんいる分野です。そのなかで、たいしたこと、有益なことを言える知識も教養もありませんが、何かひとつでも違った視点を提示できたら、などと大それたことを思いつつ。
レンタル1本50円――という安さに、もう驚かなくなっている。
実は私、数年前まであまり映画を観ていませんでした。
根っからの文化系なのですが、音楽や本(とくに小説)の方に関心が高くて、映画は観てもDVDで年間20~30本程度で、今劇場でかかっている作品に何があるのか、そもそも俳優や監督の固有名詞も覚束ないくらいでした。ほぼ毎日、日常的に観るようになったのはここ数年です。
きちんと観た映画の記録をつけ始めたのが2013年。その年に、当時の職場の近くのTSUTAYAと、新規出店してきたゲオが価格競争により、旧作1本50円、という破格の値段に落ち着いたことがきっかけでした。
現在はAmazonビデオなどのネット配信もあり、動画コンテンツの価格は、観れば観るほどダダ下がりといってもいい状況で、その是非はここでは触れませんが、一介のコンシューマーとしては歓迎すべき状況です(お財布事情にとって)。
現在はTSUTAYAディスカスの宅配レンタルと、プライム会員になっているAmazonビデオを利用しています。新作をディスカスで、ディスカスの返却中にAmazonビデオで旧作を観る、という利用方法で、定額料金以外の追加料金なしで観ることができて、おすすめです。
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海外コメディ映画不遇の時代。
……という私の映画鑑賞歴ですから、これまで名作・良作・話題作と呼ばれるものであっても、観てこなかった映画が大量にあって、そういうものを観ているだけでも愉しいし、汲めども尽きぬ映画の泉の豊穣さには敬服するばかりなのですが、毎日のように観ていると、「すごい」「面白い」「濃い」「深い」作品ばかり観るというわけにはいかなくなってきます。そういうものがなくなってくる、というのではなくて、こちらはたいした取り柄もない凡人ですから、名作のアウラを浴びすぎるのは端的にキツイ。疲れてしまうのです。
それでこの数年、息抜き、箸休めみたいなつもりで、これまであまり観なかったコメディ映画、それもアメリカを中心としたコメディ映画をしばしば観るようになり、これが見事に自分にハマりました。面白いのです。とくにアメリカン・コメディは、人種問題や地域紛争など、けっこうギリギリのテーマを扱ったりもするのですが、あえてなのでしょう、コメディとして成立させるため、程度の差こそあれ、「その先」にいま一歩踏み込まず、安心して観られる位置に留まります。一本の作品としては、「食い足りない」という気がするかもしれません。ただ、映画という大海においては、こういう「普通の面白さ」が結構、大事な気がします。本当は個々の作品に触れるべきなのでしょうが、長くなってしまうので、今日はやめておきます。
しかしながら! 現在の日本においてはどうも、海外コメディ映画というのは当たらない、市場規模の小さい、細いジャンルのようで、その多くが所謂「ビデオスルー」と呼ばれる、日本国内で劇場公開されず、DVDや配信のみといった作品が多くなっています。
ひどい邦題!――どうしてこういうことになるのか?
そしてさらにそういう作品の多くは、監督や俳優の知名度といった観客に対するわかりやすい「惹き」がない(とソフト会社が勝手に忖度している)からか、説明的だったり、実際の内容と異なる、日本の観客に受けそう(と、これも勝手に考えているよう)に見える邦題を付けていると思しき、珍妙なタイトルになっていることがままあります。
映画ファンのあいだで良作とされているもので有名なものでは、
・『バス男』
(原題 Napoleon Dynamite/後に邦題も『ナポレオン・ダイナマイト』に改題)
・『小悪魔はなぜモテる?!』
(原題 Easy A/アカデミー賞女優エマ・ストーン主演。ホーソーンの小説『緋文字』を下敷きにした良質な学園コメディ)
・『26世紀青年』
(原題 Idiocracy/バカしかいない世界になった26世紀アメリカの世界で、21世紀の普通の青年が大統領に。原題はIdiot(バカ)+cracy(政体・支配)の造語)
・『45歳からの恋の幕アケ!!』
(原題The English Teacher/こちらもアカデミー賞女優ジュリアン・ムーア主演。アメリカ映画版『ここは退屈迎えに来て』とでもいうべき地方生活者の悲喜こもごも)
などといったものがあります。私も大好きな作品ばかり。とくに『小悪魔はなぜモテる?!』はベストオブ・エマ・ストーン、ベストオブ学園映画、といいたいくらい好きな作品のひとつです。しかしながら、これらの邦題を観て、なかなか積極的に「観たい!」と思う人がいるかどうか。
バター細工選手権を通して成長する話。(←間違ってない)
他にも私の個人的に好きな作品で、妙な邦題がついているものとしては――、
・『ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して』The Big Year
・『Mr.ボディガード/学園生活は命がけ!』Drillbit Taylor
・『ダメ男に復讐する方法』The Other Woman
・『マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり』Man Up
・『ハイスクール白書/優等生ギャルに気をつけろ!』Election
・『キミに逢えたら!』Nick and Norah's Infinite Playlist
・『カワイイ私のつくり方 全米バター細工選手権!』Butter
などなど。あえて今回は、個々の作品の内容を紹介はしませんが、このなかでも『キミに逢えたら!』などは、いかにもラブコメ、といった体の邦題にした結果、無個性で当たり障りのないタイトルになってしまった悪例だと思います。
逆に『カワイイ私のつくり方 全米バター細工選手権!』などは、積極的に素晴らしいタイトルだとはいわないものの、案外これはこれで内容を表現した、苦肉の邦題じゃないかと思っています。
愛すべきバカ邦題。でもできれば、映画本編に則したタイトルであって欲しいです。
写真:Forsaken Fotos
実際、邦題を考えられている映画会社やソフト会社としても、何の考えもなく、くだらないタイトルをつけているわけではないと思います。なんとかして1人でも多くの人に観て欲しい。ときにその熱意が空回りして、ヘンなタイトルになってしまう。
後に改題される例もありますが、たとえそれがどんなに小さな、無名の作品であっても、映画という100年以上続く歴史上のデータベースのなかに、残ってしまいます。そのことも踏まえたうえで、正直にいうと、こうした珍妙な邦題に、実は私、だんだん愛着を覚えつつあったりします。
こういう一見軽薄に見える邦題の作品であっても、映画自体の面白さとは関係がありません。個人的にはこれからも邦題にとらわれずに映画を観たいと思いますし、こういうもののなかにある良作が、1人でも多くの人の目に触れることを願っています。
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