ソトブログ

映画と本、自然観察(あるいは30代後半、2児の父の日常)

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40がらみの男同士による音楽往復書簡。4月のプレイリストのテーマは「女たち」。

 

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 コーヒーを飲みはじめてもアキラはぼくのそばから離れないでダイニングの床でごろごろしたり隅のベッドにドンッと弾みをつけて腰掛けたりしていて、ぼくはアキラと目を合わさないようにしていたがしまいに我慢できなくなってアキラがぼくの顔を覗きこんで、
「でもやっぱりさあ、その好きとあっちの好きとは好きの意味が違う……」
 と言い出した。
好きは全部おんなじだ。
 人間には近づきたい気持ちと遠ざかりたい気持ちの二つしかないんだよ」
 乱暴のようだがぼくはかなり本気でそう思っているから言葉の勢いに説得力もあったはずで、アキラの「だって、――」もだいぶ小さい声になっていて、(以下略)

 

保坂和志『草の上の朝食』(中公文庫)より
(※太字部分は原文では傍点)

 

 

音楽好き(というか、ミュージシャン)の友人と交わす、音楽往復書簡。

 

いつもポエティックで長ったらしい標題をつけるわりに中身がないと評判(かどうか知らない)の当ブログですが、今回はまあ、そのまんま。それで読みたくなるかどうかは話が別ですが。

 

スギーリトルバードWEB

sugylittlebird.ikora.tv

 

スギーリトルバード氏。彼は、九州出身のよそ者である私が色々な事情(まあ、就職)で和歌山県で住むようになり、たまたま出会った、有り体にいってもかなり人見知りの私を、受けいれてくれた数少ない友人のひとりであって、彼がパタゴニアン・オーケストラというバンドを組み、私がDJをしたりしながら、20代後半から30代いっぱいのこれまでのあいだの時間のほんのひとときでも、ともに過ごすことができてよかったと思える友人の、(くどいようですが)数少ないひとり。

 

実は先日の記事で書いたChromebookソングブック、こと「This Charming Chromebook」と題したミックスCDにも、パタゴニアン・オーケストラの名曲「海辺の女の子」を収めています。2014年にリリースされた作品ですが、今もAmazon等で購入することが出来ます。

 

www.sotoblog.com

 

「和歌山発!ボブ・マーリー meets ナイアガラサウンド」との惹句や、あの元ロッキング・タイムの今野英明さんの寄せた帯文「特別なことはなにもないし、必要ない。心からぐっとくるリズムやメロディー、言葉を曲にして演奏するだけさ。そんなぼくらのブルース。」に相応しい、カジュアルかつ詩情溢れたローカルなワールドミュージック。今でも名盤だと思います。

 

――とはいえ今の話をしましょう。そんなパタゴニアン・オーケストラも今は活動を休止、そのシンガーでありギタリストでありソングライターであり、今はSSWとして活動するスギーリトルバード氏は、毎月、私にLINEを通じてAmazonプライムミュージックのプレイリストを送ってくれています。今回、4月のAmazonプレイリストのテーマは、「女たち」。

 

女たち-SOME GIRLS- (選曲:スギーリトルバード)

 

www.youtube.com

空気公団/レモンを買おう(LIVE)

 

 女たち -SOME GIRLS- (選曲:スギーリトルバード)

 

M01. フランソワーズ・アルディ/Comment te dire adieu(It Hurt To Say Goodbye)
M02. ブリジット・バルドー/Harley Davidson
M03. 美空ひばり/恋人よ我れに帰れ
M04. Zaz/Sous le ciel  de Paris
M05. アストラッド・ジルベルト/おいしい水(feat.アントニオ・カルロス・ジョビン)
M06. 武田カオリ/雨にぬれても
M07. ジュディ・シル/Crayon Angels(Remastered Version)
M08. 原田知世/くちなしの丘
M09. アン・サリー/オンリー・ラヴ・キャン・ブレイク・ユア・ハート
M10. シャーデー/オール・アバウト・アワ・ラヴ
M11. カーペンターズ/バカラック・メドレー
M12. 空気公団/レモンを買おう
M13. 杉瀬陽子/遠雷

 

※今回、アーティスト名、曲名はAmazon Musicでの記載どおりにしてみましたが、カタカナ表記と英字表記が混在しているのがわかります。各コンテンツ(音源)ごとに、ローカライズが異なるのかな?

 

彼いわく、

今回は女好きのソト君のために女性アーティストばかりを揃えてみました。(わざと語弊のある言い方をしてみたww)
題して「女たち -SOME GIRLS- 」 です。

 

とのことで、彼の、洋邦/ロック/ポップスに留まらず、中南米カリブ海からアフリカンまで、ボーダーレスで深い音楽的素養を活かして、Amazonプライムミュージックの100万曲という、Amazon Music UnlimitedやApple Music、Google Play Music、Spotifyなどの有料サブスクリプションサービス(プライムだって無料ではありませんが、破格に安い)と比較して絶対数の少ないライブラリを逆手にとって、王道から掘り出し物までを絶妙なセンスで選曲してくれる彼のプレイリストは、いつも愉しみにしています。

 

――そうなんです。Amazonプライムの100万曲、確かに数千万曲、という他のサービスと比べて見劣りしますが、実際にそれを味わいつくしている人がどれくらいいるでしょうか。たかだか音楽好きの友人たった二人のやりとりのなかでも、まだ見ぬ女の子、もとい、音楽との出会いがたくさんあります。しかも、「女性アーティスト」という縛りを入れてさえも。

 

というわけで私も、(ほぼ)女性アーティストに限定したプレイリストを作成してみました。それがこちら。

 

A Girl Like You compiled by Soto (選曲:ソト)

 

www.youtube.com

野宮真貴/東京は夜の七時(盆踊りVersion)

 

A Girl Like You compiled by Soto (選曲:ソト)

 

M01. 中山うり/寝ても覚めても
M02. sugar me/Anyone Else But You(feat.王舟)
M03. ヒュー・グラント&ドリュー・バリモア/Way Back Into Love(Demo Version)
M04. ビヴァリー・ケニー/A-You're Adorable(Alphabet Song)
M05. エイミー・マン/Momentum
M06. The Shacks/Audrey Hepburn
M07. Ye Ye/のぼる、ながめる(album ver.)
M08. world's end girlfriend/Storytelling
M09. メアリー・J・ブライジ/ミラージュ
M10. 野宮真貴/東京は夜の七時(盆踊りVersion)
M11. Tico&icchie/Down Town feat.中納良恵
M12. 児玉奈央/きみだけのマジックアワー
M13. 市川愛/Music and me

 

DJでもプレイリストでも同じことですが、選曲で一番愉しいのは、<流れ>を考えること。私はいつも、いきなりなんとなく聴き始められて、ぼんやりとした余韻とともに終わる感じを心掛けています。それに、自分がクルマで聴くことが多いこともあって、移動中のBGMとして聴けるような(ただし今回は、どちらかというとベッドルーム対応です。テーマ「女」だし)

 

<好き>は全部おんなじ、人間には近づきたい気持ちと遠ざかりたい気持ちの二つしかない。だからこそ。

 

 

そういうわけでAmazonプライムミュージックを味わいつくそうという、(せっかくアフィリエイトを導入している当ブログなのに)Amazon Music Unlimitedに誘導しない記事を書いています。


ファンが音楽に(あまり)お金を使わないことは、ミュージシャンにとっては死活問題です。現時点では私は、Amazonプライムミュージックは音楽への、それぞれのアーティストへの関心の、興味の入り口だという感じがしています。世の趨勢としては、音楽コンテンツの需要および消費はサブスクリプション型の配信(ストリーミング)サービスに向かっていくのだとしても*1好きなミュージシャンに対しては、その「好き」を表明、意思表示するために、CDやレコード、ライヴといった形で積極的に(私の場合は多いとはいえない可処分所得のなかから)対価を払っていきたいと思います。

 

冒頭に引用した保坂和志の小説、『草の上の朝食』にある、

 

「<好き>は全部おんなじ」で、「人間には近づきたい気持ちと遠ざかりたい気持ちの二つしかない」

 

――という言葉が私には非常にフィットしていて、愛する妻や子どもたち、親しい友人や、大好きな音楽や映画、文学には時間と、(資本主義社会においては)お金を使いたくなるものです。その上で、大切に慈しみ、味わい、愉しみ、睦み合う。40がらみの男同士による音楽往復書簡を私が続けている理由は、そんなところです(ちょっと気持ち悪い?)。皆さんもいかがでしょうか? そんな音楽往復書簡に興味がある方は、身の回りで始めてみて下さい。音楽に対する付き合い方、「好き」の感じ方が、少し、変わるかも知れません。そして気が向いたら、私にも、そのプレイリストをそっと教えて頂けたら嬉しく思います。

 

好きっていう気持ちはどれでも同じって、いいね」
 と言いながらよう子はあまったキャットフードを片づけていたけれど、アキラに勢いまかせて言ったことをあとになってそのままよう子から言われるとこっちは少しきまりが悪くなる。
 近づきたい気持ちと遠ざかりたい気持ちの二つしかないというのはウソで口にしたわけではないが、問題はそこから先で、つまりこれだけでは何も説明したことにはならないからぼくは何か言い訳をしようと思ったが、それよりさきによう子がプラスチックの皿と水飲みの容器を洗おうとしたのを見て、アキラが「オレ、やる」と言って隅のベッドから跳ねて流し台に行った。

 

保坂和志『草の上の朝食』(中公文庫)より  

 

 

【過去記事より、プレイリストのススメ】

www.sotoblog.com

*1:というより、そちらに向かっていくということは、ユーザー(リスナー)にとっては実感としては、やはり音源は「タダ」か、「タダに近いもの」という感覚に(更に)なっていくのでしょうか?