ソトブログ

映画と本、自然観察(あるいは30代後半、2児の父の日常)

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I Dub Fish, 鮎 Return to Sea.(熊野川落ちアユせぎ漁体験)

 

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Some stay in the river
and some go out to sea
To keep this cycle in motion
I must go on

 

フィッシュマンズ「I Dub Fish」より(作詞・佐藤伸治)

  

少々わかりにくいタイトルになってしまいましたが、こちらは私の最も好きなバンドのひとつである、フィッシュマンズの「I DUB FISH」という曲の詞。このバンド唯一の英詞によるナレーション、ポエトリー・リーディングのようなスタイルで、“I am a fish”というフレーズから始まり、ある魚の一人称視点から、産卵のために海から川へ遡上し、孵った魚たちがまた海へ戻る、という回遊魚のライフサイクルを歌っています。

 

晩秋の熊野川でアユの伝統漁法を体験。

 
前回紹介した奇絶峡のイベントの前日、11月11日には、環境省主催のイベント「吉野熊野国立公園 熊野川の伝統漁法を学ぶ!」に参加してきました。こちらも小2の長男とともに。場所は和歌山県田辺市街から車で1時間あまり、熊野川の支流である大塔川の河川敷。そばには田辺市立本宮小学校があり、集合場所は小学校の駐車場でした。

 

 石や木々(竹など)を並べて川を横断する堰(これを「せぎ」という)を作って、産卵のために川を下る、“落ちアユ”をせき止めます。

 

晩秋の今は、アユの産卵期。アユもまた、川と海を回遊する魚です。「I Dub Fish」に歌われる魚やサケなどとは異なり、アユの場合、生まれたあと、稚魚の間だけを海で過ごし、春になると川の上流へ遡上していきます。夏にかけて、主に川のなかの石に付着した藻類を食べて成長した鮎は、産卵期に下流域へと下りて行きます。

 

この時期に産卵のために川を下るアユ、すなわち“落ちアユ”を、「せぎ」によってせき止め、「小鷹網」(こだかあみ)という投網で捕らえるのが、熊野川の伝統漁法である「せぎ漁」です。

 

――そうしたことを当地の熊野川漁協の漁師さんにレクチャーいただいたあと、実際にプロの実演を見学しました。

 

一瞬の妙技! 小鷹網の格好良さ。

  

投網の瞬間。ぼうっとしてたら見逃してしまいそうな一瞬の出来事でした。

 

これがめちゃくちゃ格好いい。実演された漁師の方は、かなり年配のおじいさんでしたが(失礼! あとで新聞記事を見たら、御年88歳だそうです)、じっと川面を見つめてアユが集まってくるのを見計らいます。少し後ろの方から、参加者の私たちも見つめていましたが、少なくとも私には、きらきらと波打つ川面のせいで、なかなかうまく目視できません。しかし漁師さんは、瞬間、それこそ居合のように、静から動へ!

 

――網を投げ入れ、ゆっくりを投げた網の方へ歩を進めて網を手繰ると、そこに何匹もアユがかかっています。一投で、多い時は数十匹、最高では100匹以上かかることもあるそうです。

 

鷹が羽を拡げて獲物を捕らえる様子から名付けられたと言われる「小鷹網」に、何匹ものアユが。

 

お腹にたくさんの卵を抱いたメスも、繁殖期で婚姻色に色づいたオスも、たくさん獲れました。

 

そのあとは子どもたちに投網を体験させてもらったり、川の一部を囲って生け簀を作り、子どもたちや童心に還った「オトナコドモ」たちが、水浸しになりながらアユのつかみ取りに興じたり。息子も誰よりも全身びちゃびちゃになりながら、一心不乱にアユを追いかけていました(実は私も)。朝から準備していただいていたらしく、何十匹も、もしかしたら百匹以上もいましたから、すぐに捕まえられそうなものですが、川は彼らアユたちの領域。翻弄されながら、どうにかこうにか捕まえることができたときには、みんな満面の笑顔になっていました。

 

 アユが指先からスルスルと逃げていく!

 

そして待ちに待った昼食。獲れたてのアユを青空の下、炭火焼きでいただく。

 

お昼は、そうやって獲れたたくさんのアユを、塩焼きにした試食会。これはもう、言葉はいらないくらいの美味しさ。写真を見返しているだけで、ブログを書いていることを忘れてしまいます。というわけで写真を御覧ください。

 

漁師さんやスタッフの方に教わりながら、自分たちで串に刺したり――、

 

更にまだたくさん。網焼きにしたり――。 

 

そして昼食には、上海ガニの親戚(同属異種)であり、淡水のカニとして有名な「モクズガニ」も振る舞われました。カニミソが甘くて美味しい。

 

 食事中、息子も地元紙の記者さんに取材を受け、「今まで食べたアユで一番美味しい」と申しておりました。

 

体験してこそわかる“川の恵み” 。

 

 食後は、日本国内でも随一の清流と言われる熊野川の生態について教えていただきました。熊野川水系は河口から上流まで、ダムや堰といった河川横断物が少ないため、コイやカワムツ、アマゴといった純淡水魚だけでなく、アユやハゼのような海と川を行き来する回遊魚が多く、豊かな生態系が維持されているそうです。和歌山に住んでいると海や川などで遊ぶ機会は多いですが、意識していないと、こうやって改めて学ぶ機会は意外と少ないものです。

 

豊かな川の恵みに感謝しつつ、これからも子どもたちに(もちろん自分でも)、自然に触れ合う経験をたくさんさせてあげたいな、と思った一日でした。

 

熊野川で見られる魚たちについて、熊野自然保護連絡協議会の先生がその場で捕らえ、解説して下さいました。写真、縦縞が入っている2匹がカワムツ。横縞の一匹はオイカワ(右上)です。頭から尻尾が縦なので、魚が水平に泳いでいるとして、地面に対して水平に入っているのが縦縞、垂直に入っているのが横縞、ということになります。

 

※当日の模様は、スタッフとして来られていた、那智勝浦町にある「吉野熊野国立公園 宇久井ビジターセンター」のサイトにも掲載されていました。こちらはまだ訪れたことがないのですが、宇久井半島も一度行ってみたいです(和歌山は住んでいても広くて、まだまだ行ったことがないところがたくさんあります)。

www.ugui-vc.jp

 

【今回のBGM】

SEASON

SEASON

 
宇宙 ベスト・オブ・フィッシュマンズ

宇宙 ベスト・オブ・フィッシュマンズ

 

 フィッシュマンズ「I DUB FISH」は、1996年のシングル『SEASON』のカップリングとして収録されています(今は配信版があるのですね!)。上記ベスト盤『宇宙』2枚組のDisc2(レアトラックス集) 、 M7にも所収。フィッシュマンズのなかでもDub色の濃い、出色の、ドープで渋い味わいの一曲。

 

 【自然観察の過去記事より】